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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 41
しおりを挟む興奮しているのだろう、ふんがふんが、と鼻息を漏らしている。
メシア、と司破が名前を呼べば、キノコが動きを止め、緩慢な動きで顔を上げた。
「昨日、捨てられたって言ってたな。何があったのかは知らねぇけど。俺がお前を大事だって言うのも、薄っぺらいか? 俺は、いつかメシアを捨てるかもって、お前のこと不安にさせてんのか?」
静かに問い掛けると、明紫亜の肩が震え出す。
ぶんぶんと勢い良く首を左右させる彼は、言葉を探すように口唇を開閉させた。
「……よく、わかんない、です。わかんないけど、司破さんの場合は、捨てられたらって考えるだけで発狂しそうになるから、考えないようにしてます。司破さんが僕のこと、大事だって言ってくれるのは、単純に、すんごく嬉しい。その分だけ、臆病になります。怖いです。僕が汚い不要物だって知ったら嫌われるかもって。そんなことないって解ってても、頭が勝手に考えちゃうから、怖くて堪らない。本当は、過去だって言わないで済むなら言いたくないけど。それじゃあ駄目だって解るから。今は良くてもいつか終わりがきちゃうから、頑張ろうって決めました」
ぐぬう、と呻く明紫亜の腕が司破の体に巻き付き、胸に顔を押し付ける。
司破の手がマッシュルームのような柔らかい髪を撫でていく。
「小畑さんにもそうやって思ってること正直に言えばいいだけだろ。メシアが何を考えてどう想っているのか解らないから向こうも不安になるんだ。ちゃんと伝えれば解ってくれるさ。お前は本心を隠し過ぎなんだよ。子供なんだから子供らしくしてろ。下手に大人ぶるから辛いんだ。本当にお前は馬鹿キノコだな」
むむむむ、と髪を引っ張られ唸る明紫亜は黙り込んでしまう。
暫くしてから放たれた台詞は、「僕のこと馬鹿にし過ぎです」というものだった。
「僕、不毛だって思うと話すのやめちゃうから、それ良くなかったですね。おばちゃんにも失礼なことしちゃった。帰ったらもっと話し合ってみます。さっきのことも相談してみて、おばちゃんが涼子さんに相談した方がいいって言ったら相談することにします」
お前は怖がり過ぎなんだよ、と司破に頭を小突かれ、顔を上げた明紫亜の顔は間抜けにも口が半開きになっている。
額に司破の唇が落ちてくるのを呆然と受け止め、明紫亜の口元が、へらり、と弛んだ。
「そう、ですね。僕、泣き虫で怖がりで、ダメな子だけど。そんな僕でも、涼子さんも雪代の皆も愛してくれて。それは家族だからだって思っていたけど。こんな僕でも、家族じゃなくても、愛してくれる人は、ちゃんといてくれるんですよね」
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