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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 40
しおりを挟む必死で笑いを堪えている司破には気付かず、真面目に答えを導き出していく明紫亜は、冷めた顔で担任を評価する。
まあな、と頷く司破に唇を尖らせ、「僕のこと、少しでも疑いました?」と小さく尋ねた。
「いや、全然。生物の青木先生が丸井先生から聞いたらしくて、俺は又聞きだしな。青木先生もメシアのこと信じてたぞ。俺はお前と知り合いだと思われているから、確認したかったみたいだ。それはないと思うと言ったら安心してた」
双眸を瞬かせ、明紫亜は照れたように目を細める。
口端が持ち上がり明紫亜の顔に微笑が浮かんだ。
「あら、そうでしたか。それにしても、丸井ちゃんには困ったものだなあ。僕のこと嫌いみたいで凄いんですよ。それは別にどうでもいいんですけど。他の先生にあらぬこと吹き込まれるのは困るな。叔父さんに迷惑掛けちゃう内容だし、ユキちゃんに相談……ユキちゃんに、……う、うぐぐ、うぐう」
くふくふ、とご機嫌で笑い声を漏らしながらも、喜んでいるのを隠すように何てことないのだという風情で会話を続けていた明紫亜の表情が固まり唸り出す。
流石に心配になり司破が、「おい」と声を掛けるも、彼は唸ったまま頭を抱え始めた。
「おばちゃんに。先におばちゃんに相談……いやいや、ここはソーゴく、話が大きくなっちゃうか。やっぱりユキちゃんが一番無難。でも、おばちゃんが」
ブツブツとキノコを振り回して悩んでいる様子の明紫亜に、司破が溜息を吐き出し、その頭を掴むと頭突きを喰らわせる。
「落ち着け、馬鹿キノコ。一人でぐるぐるするから変なことを言い出すんだろ、お前は。一旦頭の中を整理してから考えろ」
ううぐ、と頭を押さえて、やっと司破を瞳に映した明紫亜が、司破さん、と呟いた。
「おばちゃんが。ユキちゃ、涼子さんにばっかり頼ってる僕のこと心配なんだって言うから。僕だって自立しようって思ってはいるんだよ? でもさ、そんな簡単に自立出来たら最初から依存なんてしないもん。おばちゃんは、涼子さん以外の人間も信じろって言うんだ。別に信じてない訳じゃないけど。だって、汚い不要物でも抱き締めてくれたのは、ユキちゃんだけだもん。口では何とでも言えるでしょ? 大事だとか大切だとか、そんな薄っぺらい言葉じゃなくて、ユキちゃんは行動で証明してくれたから。大事にされるのは嬉しいけど、大切だって言われたら嬉しいけど、いつか捨てられるんだって気持ちが強くて、信じ切るのが怖いんだよ」
司破の胸元に頭をグリグリと押し付ける明紫亜は、途中で叔母の呼称が戻っていることにも気付いていない様子だった。
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