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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 37
しおりを挟む両の手を遊ばせる明紫亜は、其処を注視しながら真剣な響きで言葉を発した。
ちらり、と司破に視線を投げ、不安で堪らないと言う顔を晒す。
「俺は。過去は単なる過程だと思っているが、それでも、メシアのことは全部知りたい。お前が何に縛られているのか、教えてくれ」
腕に抱えた明紫亜の頭に顎を乗せ、彼の頬を指先で擽る。
明紫亜が手を伸ばし、頬を辿る手を掴む。
ぎゅっ、と握り込むと、手の甲に額を押し付けた。
「僕のお母さんは、神沼 温子さんって言います。高校生の時に、両親を事故で一度に亡くしたそうです。叔母さん二人は、まだ中学生と小学生だったけど、頼れる親戚もいなくて。温子さんは、妹を施設に預けるのが嫌で、高校を中退して風俗で働き始めて妹二人を育てていました。でも、温子さんが20歳の時、突然いなくなりました。涼子さんは高校を卒業する年で、中学で教師をしていた雪代 蒼護さんとの結婚が決まっていました。冷子さんは、小学校を卒業する年でした。二人は、涼子さんが結婚するまで温子さんの残していたお金で過ごし、結婚してからは雪代の家が面倒をみてくれたそうです」
淡々と紡がれていく明紫亜の母親の話は、彼自身も叔母から聞かされたものなのだろう。
ここまでは何の感情も見せずに話していた明紫亜の手が震え始めた。
「僕は、温子さんが22歳の時に産まれました。その時もまだ温子さんは戻らず、僕の出生を叔母二人は知らなかった。温子さんは古いアパートで、僕と二人で暮らしていました。お仕事は風俗で、毎日違う男と帰って来て、セックスをしては追加料金を男から貰っていました。僕が見ていてもお構いなしでした。ご飯はスーパーで買ってきた惣菜で、僕は母親の手料理を、食べたこと、が、ない、です。僕が4歳になった頃から、温子さんは僕に手を挙げるように、なりました。汚い、要らない、消えろ。色々、言われた。僕のこと、凄い目で、睨むの。死ねって言いながら、何度も叩かれた」
体を震わせる明紫亜が深呼吸をする。
司破の明紫亜を抱く腕に力が籠った。
「その頃から温子さんは。出掛ける時に僕を子供部屋に閉じ込めるようになりました。外鍵を掛けて一日帰って来ない。僕は、何もない部屋で、温子さんの帰りを待つ、そんな日々でした。お腹は空くし、排泄も垂れ流すしかなくて。部屋を汚すと温子さんは凄く怒って、ぼくのあたまを」
明紫亜の言葉が止まり、青白い顔で浅い呼吸を繰り返している。
司破の腕が明紫亜の体を持ち上げ反転させると、自分の腿の上に座らせた。
「メシア。今日はおしまいだ。ゆっくりでいいから」
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