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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 16
しおりを挟む過去と向き合って、司破をちゃんと受け止めたい。
その為には、寄生虫に負けてなどいられないのだ。
「ギーチ。きっと僕は、ギーチが思っているよりもダメな人間だと思うけど。それでも友達でいてくれる?」
手を離し、箸を持ち直す。
微笑んだままで首を傾けた。
義一郎の瞳が見開かれ、口唇が小さく開閉している。
「僕は、メシアがどんな人間でも友達になりたい。メシアの傍に、いたいんだ」
思いの外、強い眼差しに見詰められ、明紫亜の目尻が僅かに染まった。
一瞬、辛そうに歪められた表情も、次の瞬間には笑みが浮かんでいる。
ありがとう、とボソリと呟いた明紫亜の目が伏せられた。
明紫亜の傍にいたいと宣う義一郎に、微かな痛みが胸に宿る。
ちくり、と心臓に棘が刺さったように、チリチリとした。
自分の傍にいて、不幸にしてしまわないだろうか、と馬鹿みたいな考えが浮かんでは消えていく。
必死で頭から追い出そうとする絶望は、後から後にと湧いて出てきてキリがない。
細く長い息を吐き出し、明紫亜は重たい目蓋を持ち上げた。
負けたくないと意気込んだ癖に、もう挫けそうになっている。
情けないと思う気持ちはひた隠しに明紫亜は、にししと口角を吊り上げた。
「ギーチ、それってばプロポーズ?」
揶揄するように告げて、奥深くの葛藤を誤魔化す為に白米を掻き込む。
苦しくて胸が張り裂けそうでも、その感覚を無視しようと笑顔を貼り付ける。
義一郎はわたわたと両手を上下させ、赤い顔で首を横に振りたくった。
純な反応に思わず苦笑が溢れ落ちる。
「はは、ギーチはピュアだなあ。そんな可愛い反応してると悪い狼さんに襲われちゃうぞ?」
白米を呑み込めば明紫亜の唇から舌が覗き、悪戯に笑っている。
義一郎は目を瞬かせ、きょとんと明紫亜を見詰めた。
「僕、男だし襲われるとかないだろ? それに、僕みたいなのを襲う人もいないよ」
首を傾けた義一郎の口元には苦笑が浮かぶ。
箸がきんぴらごぼうを持ち上げ、彼の口内へと消えていった。
「でも気を付けた方がいいと思うよ? 狼が男とも限らないしさ。それに、男もイケる人は案外いるしねー。ギーチは自分で思っているよりも魅力的なんだ。僕の見立てだと、瀬名先生もギーチのこと気に入ってるんじゃないかなー。あのタイプの人は、滅多に他人を信用しないと思うんだけど。僕の体質をギーチも知ってるって伝えた時、安心だって言ったんだよ。ギーチのことは信用しているみたい。気を付けてね。瀬名先生、悪い人ではないけど、奥が深そうだから。僕はあんまり近付きたくない」
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