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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 09
しおりを挟む「あ、おい、神沼! 下痢なら言えよな。トイレぐらい行かせてやったぞ」
ボサボサヘアーを掻き回し、司破は苦笑を浮かべた。
トイレに消えて行く明紫亜は、まるで台風のようだ。
息を吐き出して道具一式を手に理科準備室に向かった。
* * * * * *
トイレで汚れた下半身を綺麗にして教室に戻る。
自分の席に座り、四限目の支度をした後、スマホを取り出した。
LINEが数件届いている。
企業のものが2件。
従弟で親友の雪代 蒼真(ユキシロ ソウマ)からの近況を尋ねるもの。
涼子からも届いていた。
うーあー、と唸って背中を背凭れに預け、スマホを机上に放る。
好きな人が出来たと叔母にLINEを入れた。
その返信だった。
『明紫亜の過去を受け入れられる人間以外は認めない。ちゃんと自分で全てを話せる人間が現れたら、また連絡してくれ。私はいつでも明紫亜の幸せを願っているよ』
涼子は誰よりも優しくて、どんな人間よりも厳しい。
過去を自分で話すなど、ハードルが高過ぎる。
けれども、自分で話すべきなのだろう。
相手と一緒に生きていくことを決めたのなら、覚悟を決めなくてはいけないのだ。
司破に全てを話すべきだと、明紫亜も解っている。
彼が急かさないで明紫亜から言うのを待ってくれているから、どうしても甘えてしまう。
司破の優しさが嬉しくて甘えを捨て切れない自分が、とても醜く思える。
自己嫌悪に押し潰されそうで、なるべくならば甘えないようにと思うのに、体は勝手に彼へと甘えにいく。
もっともっと甘やかされたいと考える自分に嫌気がさして、それでも司破から離れることが出来ない。
まるで中毒のようだった。
麻薬みたいに体中を浸蝕していく。
溜息を一つ吐き出し、机上のスマホを取り上げ叔母に返信をしようとした時だった。
もう一件、LINEが届いた。
『昨日のホテルで待っていて欲しい』
司破からだった。
短い内容でも、それだけで嬉しくなってしまう。
ニヤける顔を片手で隠し、了解です、と返信した。
叔母と蒼真にも返信をしたところでチャイムが鳴り、古典の教師が入室して来るのを、どこかぼんやりと眺めていた。
四限目が終わり、お昼の時間になる。
明紫亜は鞄から小畑 智如(オバタ トモユキ)の作ってくれた弁当箱を取り出す。
小畑はあの筋肉質な見た目に似合わず、家事全般をそつなくこなす。
料理、洗濯、掃除、裁縫、園芸、などなど器用にやってのける彼は、結婚していたなら良い旦那になっただろうと思わせる。
今、彼の愛は行き場所を失い彷徨っていた。
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