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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 03
しおりを挟む頭を庇いしゃがみ込んで必死に叫ぶ明紫亜に、流石の横畑も赤面し動きを止める。
「おまっ、こっちは仕事だ! もういい、行け行け! 後日でいいから証明するもの持ってこいよー」
溜息混じりに手を下ろす横畑を目に、ゆっくりと立ち上がり、隣の義一郎に涙目を向け、怖かったよー、と告げると、横畑に向き直り頭を下げた。
「はーい、了解です! 横畑先生、また会いに伺いますね? 僕のこと、ちゃんと知って欲しいから、てへ」
双眸を細め口角を上げれば、人差し指を口元に当て小首を傾げ、横畑に片目を瞑ってみせる。
「変な言い方をするな! 誤解されたらどうする、馬鹿野郎」
「えー? 僕は別に構いませんよー? 例え横畑先生が妻子持ちでも! なぁんて、冗談ですけどねー」
怖い顔で睨んでくる横畑に、にへらと笑みを向け、ではー、と義一郎と共に去って行く。
明紫亜が去った後、司破は面白くない気分を誤魔化すように髪を掻き乱した。
明紫亜の魂胆は解っている。
司破と明紫亜の関係が終わったのだと、隣の女教師に印象付けるためだろう。
理解してはいるが、横畑とのイチャつきを見せ付けられ、面白い筈もない。
しかしながら、感情を顔に出せば勘付かれてしまう。
司破は溜息と共に校門を通り過ぎて行く生徒達に意識を集中させた。
* * * * * *
3階にある教室に入り出席番号順の席に座り荷物を置く。
義一郎は廊下側、明紫亜は窓際である。
クラスメイト達の遠巻きの視線をもろともせず、明紫亜は授業の支度を始めた。
「ねえ、神沼くーん! その髪、中から飴玉出てくるって、ホント?」
一限目の教科書を机上に出していると、女子が数人近寄ってきて、好奇の目を明紫亜の頭髪に向ける。
マッシュルームヘアーは、見ようによっては玉葱ヘアーにも見えるようだった。
これまでの人生で、何度か同じ質問を受けたことがある。
んー、と首を傾げてから、えへへ、と笑ってみせた。
「まだ飴玉が出てきたことはないけど。今度試してみようかなー。何の飴が好き?」
机に出してあったノートの紙端を千切り、女子達に視線を送ると、彼女達は嬉しそうに顔を輝かせる。
「えー、何だろー! もも味とか好きかも!」
「あっ、私はぶどう味が好きだよ!」
「私、イチゴ!」
キャッキャッ、と好きな飴の味で盛り上がるのを横目に千切った紙切れに書き殴っていく。
「じゃあ、用意するから、また今度飴玉マジックしようね」
ぴらり、と紙切れを持ち上げてみせ、口端を上げるだけの微笑を向けた。
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