あべらちお

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
90 / 242
一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

オリエンテーション 40

しおりを挟む


「なんて言うのか、気付くと心覗かれそうで怖いと言うか。人を操るのが上手なんでしょうね。僕にとっては天敵の類なんですよー。瀬名先生のこと、嫌いじゃないけど怖くて。ああああ、瀬名先生の親戚ってことは、お兄様ももしかして同じタイプですか?」

うぬぬ、と眉間に皺を寄せて司破を窺う明紫亜の瞳は不安に揺れた。

「瀬名先生よりも何枚も上手だろうな。騙したつもりで騙し切れていない可能性もある。もし接触してきても、抵抗はするなよ。余計に固執してくる変態だ」

険しい表情で頷く司破は溜息を吐き出し、おもむろに自身の髪を掻き混ぜる。
言い難そうに逡巡した後、司破の口から言葉が紡がれていく。

「それから、こんなことを言うのも酷だとは思うが。もし接触して来た時には、生い立ちから人間関係まで、殆どの過去を知られていると思え。その体質のことも調べ上げてくるだろうから、きっとメシアにとっては」
「それは! あの、僕が知らない過去でも、知っている可能性、は、ありますか?」

辛いと思う、と言い掛けた司破を遮り、切羽詰まった表情の明紫亜が声を張り上げた。
今にも泣き出してしまいそうな顔で拳を握り、ただ司破の瞳を真っ直ぐに見詰めている。

「例えば、どんな過去だ?」

明紫亜の目を真剣に見詰め返す司破に問われ、彼は唇を噛み締めた。
すっ、と目線を落とし俯く明紫亜の手が、司破の胸元を握り締める。

「たとえば。僕の、父親、のこと、とか、です。僕の中で、ある程度の答えは出ているんです。解っているんです。名探偵マッシュルームに解けない謎なんてないんですよ」

明紫亜の頭が司破の胸に寄り掛かった。
肩を震わせて、司破さん、と呟き、明紫亜は嘲笑するかのように、はは、と嗤う。

「僕はきっと、望まれて生まれた子供ではなくて。僕の出生が、母をひどく傷付けた筈なんです。だから僕は、汚い不要物でいなくてはならなかったんですよ。だって、母の怒りのやり場は、僕しかなかったんだろうから。それなのに、母は僕を捨てた。それは彼女なりの愛情だったんだと、今では思えることもあるんです。僕の推理が正しいのか間違えているのか、確かめる術がずっとなくて。もしも僕の推測が当たっているならば、それはとても辛いから、僕はずっとずっと逃げてきたんです。でも、お兄様が僕のことを調べ上げると言うのなら、父親のことも明らかになるんですか?」

ぐりぐりと頭を司破の胸に押し付けながら、淡々と話す明紫亜の頭が掴まれて後ろに引かれた。
怒った顔の司破と目が合い、ごつん、と頭突きをかまされる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...