88 / 242
一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
オリエンテーション 38
しおりを挟む「気持ち良いからイったんだろ、馬鹿キノコ。俺は人殺しだぞ。もう少し警戒しろよな」
とん、と明紫亜の胸に拳をぶつける司破に、明紫亜はキョトンと首を傾けた。
「でも、殺さないって言ったの、司破さんですよ? 僕のこと、殺しそうで怖いですか?」
ふむう、と顎を擦りながら唸ると、司破を上目遣いに窺う。
「そうだな。殺さない自信はない。お前、すげぇいい顔するから理性が飛びそうになんだよ」
誤魔化しても無駄か、と司破は苦笑と共に息を吐き出し、首肯した。
「司破さんに殺されるなら本望ですよ。愛する人に殺して貰えるなんて幸せ過ぎます」
にへら、と嬉しそうに笑みを象り双眸を細める明紫亜の手が司破の頭にと伸びていく。
くしゃり、とボサボサヘアーを掴み、顔を近付ける。
司破の唇をペロリと舐め、好き、と呟いた。
「ホントお前、変な奴だな。何にしても、喉のことも心配だし、暫くはやんねぇよ」
離れていく明紫亜の後頭部に手を回し、引き寄せれば口付けを落とす。
至近距離で有無は言わせないと明紫亜を睨んだ。
「うう、司破さんの頑固者」
唸り声を上げながら司破の肩口に額を乗せる明紫亜の頭を撫でていく。
「メシアのこと、大事にしたいんだ。わかれよ、馬鹿キノコ」
耳元で囁くと明紫亜から、うぐぐ、ううぐ、と発せられる。
それでも納得したのか、彼の首はコクリと首肯を示し、司破の首に腕が回された。
ぎゅう、としがみつくようにして明紫亜は頭を肩に押し付ける。
彼なりに甘えているのだろう。
司破は胸がじんわりと温かくなるのを感じる。
これが愛しいという感情なのだ。
噛み締めるように明紫亜の体に腕を回した。
「そんなことよりも、だ。今後の話すんぞ。大事なことだからな」
そのままの姿勢で話を変えると、そろそろと明紫亜の顔が上がり、仄かに染まった顔が見える。
甘えと言うよりも照れ隠しだったのか、と苦笑を溢す司破に、明紫亜は微笑んでみせた。
「はーい。僕と司破さんは恋人同士だけど、教師と生徒で、人様には言えない関係だから、普段はただの教師と生徒を演じる。プラス。司破さんのお兄様には、僕と司破さんは別れたと思わせる。そして、司破さんの車とお家は監視されている可能性が高いから使わない。僕の下宿先も監視の可能性ありなので、同じく使わない。詰まり、僕と司破さんがイチャイチャ出来るのは、ラブホのみ! ってことだよね、先生?」
スラスラと述べていき、人差し指をピシリと立てて小首を傾げる明紫亜の背中を、ゆっくりと撫で、メシア、と耳元で囁いた。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説



クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる