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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
オリエンテーション 13
しおりを挟む「何してたんだ。まさかと思うけど、強姦するつもりだったのか?」
倉本絡みではないと解り安堵するも、明紫亜の姿を思い出し、怒りがぶり返す。
冷静になれ、と言い聞かせ、溜息と共に問い質した。
「そこまでは! なんて言うか、最初は神沼の体質が本当かどうか確かめるつもりで。面白くなってついやり過ぎたのは認めるよ」
首を必死に振る姿を一瞥し、へえ、と相槌を打つ。
目の前の男を殴り付けたい衝動を抑え込んだ。
「体質、ね。神沼の体質、知ってんの?」
「え? ああ、小学校一緒だったんすよ。彼奴、地元では有名だったけど、近くで見るのは初めてだったから、気になったって言うかさ。ゲーム見学してたから、まだ治ってねぇのかと思って。面白くなかったんすよ。俺は、神沼の体質、噂でしか知らなかったし、サボる口実なんじゃないかって噂も、小学校の頃あったし。まだ特別扱い受けてんのか、ってむしゃくしゃして、それでつい」
話を聞いて、教師からの特別扱いが嫌だと言っていたことに合点がいく。
「つい、犯そうとした、って?」
意地悪く聞き返せば、顔を真っ赤にした男の首がブンブンと揺れた。
「だからそこまでは! なんかさ、体震わせて抵抗されると、こう、萌えるって言うか。髪が、キノコじゃなくて、女みたいにも見えたし。それでムラムラしたんだけど、触っても気持ち悪いしか言わねぇから、ついムキになっちまったんだよ。俺、普通に女の子好きだし! 犯すとかナイナイ、ないって!」
本当だからっ、と涙目で訴えてくるのは、司破のことが恐ろしいのだろう。
はああ、と溜息を吐き出す。
「わかったわかった。もういい。このことを学校に言うかどうかだが、どうする? 神沼の意向も当然汲まれるべきだろうし、後で話をするが。神沼が知られたくないと言うなら、あまり事はデカくしたくない。神沼次第、ってことでいいか?」
手で少年を制して尋ねれば、少年達の顔は青褪めた。
「学校に言うのは勘弁してよ! 副担のよしみでなんとか! 頼んます!」
「神沼がどれだけ恐ろしい想いをしたと思ってんだ。自業自得だろうが。……もう消灯時間も過ぎたし、早く部屋に戻れ」
腕時計に視線をやれば、少年達を急かして、自分も浴室を出る。
三人が風呂場を出るのを確認して、司破もその場を立ち去った。
鍵で部屋の扉を開け、中にと入れば、窓際のソファーに一人で座る明紫亜が目に入る。
ソファーの上で抱えた足に伏せられている顔が、物音を耳にしてゆっくりと上げられていく。
近付く司破を視界に入れて彼はまた俯いてしまう。
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