あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

オリエンテーション 06

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「具合悪いなら無理に来なくても此方は構わないのにな。あの子、親戚に預けられているって話ですし 休ませて貰えなかったんですかね?」

あはは、と他人の傷口を肴に笑える神経に、司破はひどく気分が悪くなった。
保健医の瀬名は、ではこれで、と席を立ち、部屋を出て行く。

「笹垣先生、神沼君と知り合いなんですってね? 何か事情、ご存知なんじゃないですか?」

1―Cの副担任にそう尋ねられて、目を瞬かせる。
明紫亜と何か話したのか、と怪訝に思いながらも、話には否定した。

「知りませんよ。知り合いと言える程のものでもないですし、ね」

彼女は司破の返答に小さく笑んだ。
探りを入れられている。
そう感じた。

「神沼君もそう言ってましたわ」
「笹垣先生、神沼と知り合いなんすか? あの子、本心が読めなくないです?」

司破とC組の副担任との会話に入り込んできた明紫亜の担任は、ふう、と溜息を吐いて額を手で押さえている。

「そうでもないですよ」

一言だけ答えて席を立った。
自分の生徒に対して彼は、愛情を抱いていないようにも思える。
己の信念に応えてくれる生徒は大事にし、それ以外の生徒には冷たい、そういう教師は案外と多いのだろう。
明紫亜の本心は、笑顔ととぼけた表情の裏に隠れてはいるが、ふとした瞬間に顔を出す。
まだまだ子供で、抑え切れない感情が向けられるのだ。
それをすることを、明紫亜自身は良しとしていないようだが、司破としてはそんな彼を見るのも楽しかった。


 部屋を出ると、廊下には瀬名が壁に背を預けて立っていた。
彼は此方に気付き、その中性的な顔に笑みを浮かべる。

「お話、終わりました? 噂話は、あまりいいものではありませんね。先生も嫌いでしょ?」

一緒に戻りませんか、と誘われて断る理由もなく頷いた。
瀬名と並んで歩くも、話題は特にあがらない。
彼は、それも苦にならない不思議な雰囲気の男だった。


 泊まる部屋に辿り着いて、会話もないままに、それぞれ自由に寛ぐ。
風呂は生徒の消灯を確認してから入ることになっていた。
もうすぐ消灯時間になる20分程前という時間に、いきなり扉がどんどんと叩かれる。
瀬名は洗面所にいるようだった。
溜息を吐いて扉まで近寄れば、来訪者を迎える。

「なんだ、騒々しい。どうした?」

扉を開けた先にいたのは、明紫亜のクラスメイトで委員長をやっている、眼鏡の似合う真面目そうな少年だった。
彼は肩で息をして、まだ濡れている髪を振り乱しながら、焦ったように口を開く。
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