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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
凹凸の巡り合わせ 22
しおりを挟む制服姿の自分と私服の司破は、歳の離れた兄弟にでも見えているのだろうか、とガラス窓に映る姿を見て思う。
「趣味とか好きな物が解れば、それに関連した物を探せばいいだろ」
エスカレーターに乗り込んで、下の階に降りていく。
ふむう、と腕を組んで考えて、下宿主のことを思い返してみる。
「料理するのは、好きみたいです。凝ったやつとか作ってくれるし」
「調理器具は拘りがあるだろうから、エプロンにしたらどうだ? そんなに金額もいかねぇだろうし」
おおおおお、と感嘆の声を上げるも、うるせえと一喝されてしまう。
「そうします! おばちゃん、いい体してるから、可愛いやつがいいかなー。ギャップ萌、みたいな」
想像すると、くふり、と笑えてしまう。
くふくふ、口元を押さえて笑った。
「人の体をイヤらしい目で見てんのか、キノコの癖に」
「違いますよー。本当にいい体してるんですって!」
何故か軽蔑の眼差しを向けられて、慌てて首を振った。
「あ。司破さんも、いい体、してますよね」
そう言えば、と後ろに立つ司破を振り返れば、ぼふりと頭を叩かれる。
ふおう、と声を上げて頭を押さえた。
「キノコ刈るぞ馬鹿が」
嫌ですよー、と髪を庇うように頭を抱え込んだ。
バカなことを言い合っている内に、テナントのある階に辿り着き、フロアガイドを手に取る。
店名の横に書いてあるカテゴリ分けを頼りに目星をつけて、その店がある階にと降りていった。
其処の店は、キッチン用品を扱う店で、様々な調理器具等が取り揃えられている。
エプロンの置いてある一角を発見し駆け寄った。
ハンガーに掛けられて、ラックに吊り下がるエプロンは、様々なデザインの物があり、ふほお、と感嘆の声が漏れてしまう。
「あ、コレ。おばちゃんみたいだ! これにしよー」
ふんふふーん、と鼻歌混じりで物色していると、ベージュ地にデカデカとクマの顔が描かれた物が目に入り手に取った。
すぐに気に入って購入を決めるも、会計をしなくてはと緊張が明紫亜を苛む。
「どうした?」
早く会計して来いよ、と司破に肩を押された。
はい、と頷いて会計カウンターまで歩く。
店員に商品を渡し、ラッピングを頼んだ。
お金をトレーに乗せて、レジで操作をする店員の手が、お釣りを手に戻ってくる。
手を差し出して受け取ろうとした時だった。
その腕を掴まれて止められてしまう。
いつの間にか後ろにいた司破のもう片方の腕が店員に伸びていく。
お釣りを受け取った彼の手には、小銭とラッピングの番号札が握られていた。
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