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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
凹凸の巡り合わせ 20
しおりを挟む「お、おりえん、てーしょん?」
唇を震わせ司破を凝視している。
そんな明紫亜に呆れたと、また溜息が口を吐く。
「入学する前に冊子貰っただろ。読んでねぇのか? 全部書いてあることだぞ」
この世の終わりだあ、と叫んだ明紫亜の上体が、ばたりとローテーブルの上に倒れた。
顔だけを上げて司破を見上げると、眉間に皺を寄せる。
「司破さんのことで、胸が一杯で、読んでない。もうもうもう! 詰、ん、だー! コレ、絶対ムリゲーだよ! 神様ってば、残酷ー!」
また顔を伏せ、詰んだ、と一言呟き動かなくなった。
「かくなる上は、サボるしか。サボるしか。サボ、サボれ、ない。ユキちゃんが、こんな僕のために、お金を払ってくれているのに! サボるだなんて、そんなことは、しちゃ、いけない」
そしていきなり、がばりと上体を上げると真剣な顔で宣うも、ばたん、と後ろに倒れ込む。
ゴロンゴロン、体を左右に揺らしている。
マッシュルームも合わせて揺れ動き、ふぁさふぁさと音を立てた。
「詰んだ、詰んだよコレ。何このムリゲー」
うーっ、と唸り、そのまま顔を腕で隠し動きを止める。
「事情があるなら、担任と相談しろよ。なんか色々、打つ手はあんだろ」
そんな明紫亜を眺めて肩を竦ませれば、食事を進める。
明紫亜は腕の中で、嫌なの、と声を発した。
「特別扱いは、嫌なんです。いいです、いいです、いいですよー! 僕には、秀逸で優秀なキノコさんがいるんですから! 大丈夫、です。担任にはまだ、言わないで下さい。あ、司破さんは、参加、されるんですか?」
ふむん、と鼻息と共に腕が外され、体を起こした明紫亜は、むんずとスプーンを掴み、スープを啜る。
視線だけを司破に向けて尋ねれば、司破の首は縦にと揺れた。
「1―Aの副担、だからな。引率として同行することになってる」
司破は皿の上のオムライスを食べ切り、スープを飲み干した。
ふぐう、と唸りオムライスを、ぱくりと食らう明紫亜は口の中の物を飲み込んで、うぐぐぐぐ、とまた唸る。
「いいなあ、1―Aいいなあ。司破さんが副担とか、妬ましいよー! ……でも、近くには、いる、んですね。それだけを支えに、僕はキノコさんと、頑張りますよー! 骨は、骨は拾って、後生大事に傍にと置いて下さいね! 僕はいつでも司破さんの傍に! いますから!」
オムライスを綺麗にたいらげて声を張り上げる明紫亜の頭を叩いた。
もふん、と髪に拳が埋もれる。
「うるせえ、黙れキノコ。怖えよ、骨なんか置いとくか」
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