あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

凹凸の巡り合わせ 17

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「オムライス」

解らないままに答えれば、了解と温もりは消えていった。
勝手にやってろ、と言い残し、司破は靴を脱いでキッチンに向かう。
はーい、と返事をした。


 靴を脱いで玄関に上がり込む。
左を見ると扉があった。
ドアノブを掴んで押すと、其処は司破の寝室なのだろう、そう広くもない部屋にセミダブルのベッドとクローゼットがある。 
それだけだった。
ふむう、と唸り、足を踏み入れる。
だいたい男は、エロい物をベッドの下に隠すのらしい。
明紫亜はそろりそろりと近付いて、床に座り込み、といっ、と掛け声と共にベッド下を覗き込んだ。


 ベッド下には、ナイフや拳銃、手錠、猿轡、縄やらなんやら、そこら辺の危ない物が、きちんと整理されていた。

「あら、残念」

想像していたエロ本やAV、大人の玩具みたいなものはなく、一人呟いて体勢を戻そうとした時だった。

「何が残念だ」

背後には司破が立っていて、お尻を蹴られる。
ぎゃん、と叫んで司破を睨めば、今度は頭に拳が入った。

「無闇矢鱈とベッドの下、触るなよ」
「解ってますよ。エロ本探してただけです。安心して下さい、それ使って死んだりしないから」

立ち上がり司破を見上げれば、彼の口端が、にぃと上がっていく。

「そんなにセックスが気になるか?」

さっきの質問のことか、と頭が考えて自然と顔には笑みが浮かんでいた。

「んー、司破さんのセックス事情は、結構興味ありますよ? エロ本も、どんなジャンルかなあとか」

人差し指を立てて唇にあてがうと、にへらと表情を緩めて首が傾く。

「そう。……食べられないものあるか?」

大きな溜息を吐き出す司破は、ふっ、と明紫亜から視線を逸らした。
明紫亜を見ないままで、司破は問いを掛ける。

「特には」

短く答えれば、解ったと部屋を出て行った。

「エロ本探索隊、はっしーん!」

司破がいなくなったのを確認して、ふむん、と鼻息を漏らして、今度は壁際のクローゼットを開け放つ。
じゃんじゃんじゃかじゃーん、とご機嫌で効果音を口ずさむ。
スーツと何着か私服が掛かっていた。
それだけだった。
ふむう、と唸り、腕を組む。
この部屋に標的はいないようだと結論付け、部屋を出た。
玄関からキッチンの方に向かっていく廊下にお風呂やトイレがあった。
そして、キッチンの扉の前にもう一つ、左の壁に扉を発見する。
おおおおお、と歓喜に首を縦に振った。


 そっ、とその扉を開けると、本棚に囲まれてデスクがあり、書斎だと知れる。
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