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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
凹凸の巡り合わせ 11
しおりを挟むはっはっ、と肩で息をし、汚れた唇を、ぺちゃり、と音を立てて舐める。
自分の口周りと床が白濁に塗れているのに気付き、司破にと潤んだままの瞳で甘えるような視線を送った。
「キノコの癖に、イヤらしい顔してんじゃねえぞ」
ああくそ、と悪態を口に、デスクに置かれたティッシュの箱から一枚ニ枚と抜き取ると、箱ごと明紫亜に渡す。
「だって、先生の亀頭で、ぐりり、ってするの、すごい感じちゃうんだもーん! この前、擦りっこした時も、今日の喉突き破られていくような感じも、すごく、イイの。僕、先生のおちんぽ、大好きです」
受け取ったティッシュで口周りに付着した精液を拭い、新しいティッシュで床も拭いていく。
顔を上げれば、あっははー、と子供のように笑った後、うっとりと熱い吐息を吐き出した。
「……口、まだ着いてる」
先に抜き取ったティッシュで汚れた自身を綺麗にし下穿きに仕舞い込んだ。
司破の手が明紫亜の顎を掬う。
反対の手を伸ばしティッシュを取れば、明紫亜の唇や顎に残る拭き残しを拭っていく。
明紫亜の眼が、心地良いと閉ざされた。
「むふふ、先生のおちんぽ、大好きです」
「二回言うな。キノコ刈るぞコラ」
同じ台詞を口に乗せて目蓋を開ける明紫亜は嬉しそうだ。
拭き終わったのだろう、司破の手が離れていく。
「昼飯、何がいい? 奢ってやるよ」
ぎしり、と椅子が鳴る。
立ち上がった司破は、床に落ちたままのネクタイを拾い上げた。
明紫亜の腕を掴んで立たせると、首に巻いていく。
手慣れたようにネクタイを締めた。
唐突にそう切り出せば、明紫亜の髪をクシャクシャに掻き乱す。
歪に形を変えるキノコに、司破の顔には笑みが浮かぶ。
「何でも、いいんですか?」
口を半開きにして間抜けな顔で司破を凝視し、明紫亜は小首を傾げた。
頷く司破を見て、明紫亜は思案気に口を開け閉めし、何かを言おうとしてはやめる。
そして、何でもいいですよー、とにへらと笑った。
「おい神沼。思っていることがあるなら、ちゃんと言え。俺はお前の本音が聞きたい」
こつん、と弱い力で頭を叩かれて、無表情で何の感情も籠もらない口調なのに、その言葉は明紫亜の心を締め付ける。
「あ、え、あ、はい。でも、あの。嫌なら、言って下さい」
あちらこちらに視線を走らせた後、司破の目を真っ直ぐに見た。
司破の顔からは、感情を読み取れないが、逆に安心して明紫亜は口を開く。
「先生の手料理、食べたいです」
珍しくその唇は震え、瞳は不安で揺れていた。
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