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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
凹凸の巡り合わせ 09
しおりを挟む眉尻を下げて誠意はあるのだと示すも、壁に掛けられた時計に視線をやり、潤んだ瞳で司破を見詰め首を傾ける。
「……何時から?」
はああ、と溜息交じりに聞かれ、明紫亜は俯いた。
どうしようか、と拳を握って考える。
司破は明紫亜の気持ちを解ってくれるだろうか。
きちんと伝えられたら、彼は何も言わずに頷いてくれるだろうか。
「17時、です」
「まだ時間あるだろ」
只今の時刻は、12時を少し過ぎた頃である。
悩んでも仕方ないと息を吸い込み、あの、あの、と俯いたまま声を搾り出すも、後に続かない。
本当のことを伝えるのは、なんて難しいのだろう。
自分の気持ち一つ伝えるのもままならない。
うーっ、と唸り声と共に顔を上げた。
司破と目が合う。
彼は無表情で、それでも怒っていないことに安心した。
「ゆっくりでいいから、落ち着けよ。神沼の話は、ちゃんと全部聞く」
くしゃり、と頭を撫でられる。
優しく何度も撫でていくものだから、心地よくなって目を細めてしまう。
彼の手から勇気が体内に入ってくる気がした。
「今日のお祝い、おばちゃん、ケーキ焼いてくれるって言ってて。血も繋がっていないのに、こんな僕に、ご馳走作ってくれるって。嬉しそうに言ってくれたから。僕、すごく、嬉しくて。お礼したくて。えっと、だから、街まで買い物、行きたくて。僕、公共機関の乗り物、乗れなくて。歩いて行こうかと。だから、そろそろ行かなきゃって思って」
一気に口にして、ふはあ、と息を吐き出す。
司破は相変わらずの無表情で此方を見ていた。
「話は解った。付き合ってやる。車を出す。これで時間は大丈夫、だろ?」
司破の提案に、おおおお、と目をぱちくりさせ、何度も首肯する明紫亜は、にぱあ、と笑顔で彼の足の間に入り込み、床に膝を着く。
司破の太腿に頭を押し付けて、うううう、と唸っていた。
「有り難う、先生! もうもうもう! 大好きだっ! 先生、大好き!」
顔を上げていきなり感無量と叫び出す明紫亜の頭を叩き、うるせえキノコ、と怒る司破の表情は、心なしか柔らかかった。
「ねえ、先生。イかせたら、いいんだよね? 僕、してみたいことあるんだけどさ」
頭を押さえながら上目遣いに司破を窺えば、何かを思い付いたとばかりに、にんまりとした顔を覗かせる。
先程から存在を主張している司破の股間にそろそろと指を這わせた。
「先生ので、お口の奥まで突いて、気道塞がれたら、死ねるかな?」
うっとりと双眸を眇めて、眼前のズボンのジッパーを下ろしていく。
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