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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
やじるし 11*
しおりを挟む喉から首筋の血管に移動し、太い血管を少し外して、肉が千切れそうな程の力で噛み付いた。
口の中に血の味が広がる。
そこまで抉れてはいないが、少しだけ肉が捲れていた。
――嗚呼、美味いな。
青年は恍惚の表情で血を流す患部を二度三度と歯を立て、ジュルリ、と血を啜る。
肉を抉るように舌先を捩じ込み、また吸った。
「はぅぅぅんっ! あっ、はっ、いっ、ちゃっ、た」
青年の唇が傷口を吸い上げた瞬間、ぎゅっと目を瞑り、唇を噛み締めて、少年はとろりとろり、と勢いのない精液を垂れ流した。
青年は少年が気を放つ表情を目に、擦り合わせていた屹立から白濁を放ち、少年の陰茎と腹に掛ける。
「あっ、ねっ、え? とま、んない。お、兄さ……」
ダラダラと止まらない射精に戸惑いの声を上げ、助けて、と言うように伸ばされた片手を掴んだ。
布団に押し付けると、少年の体をもう片腕で抱き締めた。
「おまっ、えな! キノコの分際で、俺を煽るとか、巫山戯んな」
「そんな、の! 知りませんよお。それ、より、とまんなっ、い、です。……もっ、と、噛んで……下さいよー」
怒ったように頭でグリグリと頭頂部を攻撃してくる青年に、それでも甘えた声でマッシュルームを押し付ける。
「そのうち止まんだろ、垂れ流しとけ」
「えー、鬼畜だなあ、もう」
文句を言いつつも、何処となく嬉しそうに微笑んで少年は青年の顔を覗き込んだ。
「お兄さん、名前なんて言うんですか?」
「あー、起きたら教えてやるから。風呂入って寝るぞ」
ぎしり、と音を立てて、青年は少年から体を離す。
ベッドから降りて浴室に足を向けた。
「約束ですよ?」
青年の後を追いながら念を押す少年の頭を叩く。
叩かれたところだけ、キノコがボブンと沈み、そしてまた元に戻った。
「その髪、ホント刈れ」
くっ、と悔しそうに青年の口から笑い声が漏れる。
ぶはっ、と噴き出し、可笑しそうに歪む顔で怒った声色が少年に命令した。
「無理言わないで下さいよ」
キノコを庇うように抱えて、ノー! と少年は拒否する。
「せめて縮毛掛けて整えろ」
少年が振る首の動きに合わせて、ぶるんぶるんとキノコが揺れ動く。
首を揺らすな、と少年の顔を手で挟み込んだ青年の顔は本気だ。
「僕からキノコさんを奪わないで下さい!」
ギャーギャーとバカなことを言い争いながら風呂場に辿り着いた。
気付けば少年の射精も止まっているようだった。
* * * * * *
ちゅん、ちゅん、ちゅん、と小鳥の囀る音が耳を擽り、少年は寝返りを打つ。
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