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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
やじるし 03
しおりを挟む「生きたくて堪らなくなった時に、嫌がって助けてくれと懇願するお前を、メチャクチャな方法で殺してやるよ」
耳許で囁くように告げて、青年は少年の反応を窺った。
黙りこくる彼に、諦めたかと安堵したのも束の間、少年が目を輝かせて何度も頷き始める。
「生きたくて堪らなくなるなんてこと、多分ないような気もしますが。でも、約束ですからね? 愉しみにしています!」
まだ幼い顔が興奮に上気し淡く染まるのを見詰め、変なのに捕まったなと青年は一人ごちた。
満足して服から少年の手が離れ、自由になった青年は立ち上がると、未だに座ったままの少年を見下ろす。
「お前さ、自殺願望者だろ? 自分で死ぬ勇気、ないの? それとも、死を感じてエクスタシー感じる変態か?」
気怠げに、ふぅ、と息を吐き出して問い掛けてくる青年に、少年は首を傾けた。
自覚はないようである。
考え込むように暫時の沈黙をあけて、彼は一度頷いた。
「さっき、イッてしまったので、恐らく、変態、なんだと思います。貴方に殺されることを想像するだけで、もう快感で。あっ、勿論、死にたいという気持ちに嘘偽りはないですが。ただ僕、死にたいと生きたいが共存しているので、普通の自殺願望者とは少し違うかもしれないです。まあ、自殺願望者と変態と2つ足して丁度いい感じですかね? 生と死は表裏一体で、きっと同じように死と快楽も同じなんですよ!」
なんてことのないかのように、サラリと殺人現場を目撃して達したのだと告げ、感情の昂ぶりを抑えられないのだろう、体を震わせながら少年にしか解らない持論を熱く語る。
「そ? まあ、あれ見てイッちゃうなら、相当な変態さんだな。俺も人のことは言えねぇが。やべぇ興奮すんだよ、無意味な殺人に」
舐めるように少年に視線を走らせれば、熱い息を吐き出しながら告げ、彼に向かい手を差し出した。
少年は怪訝な表情を覗かせるも、その手を掴む。
「そろそろ此処離れるぞ。お前ここら辺に住んでんの?」
ぐっ、と腕に力を込め、青年は少年を立ち上がらせる。
屋上の出入り口に足を向けた。
後ろから少年が着いて来るのを確認して問い掛ける。
「はい。と言っても、もうすぐ遠くの高校に進学するので離れちゃいますけどね」
「あー、学生さんね。中学卒業したばっかかよ。若いのに難儀だねえ」
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