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閑話:暗闇に響くは君の声
暗闇に響くは君の声 04
しおりを挟む架は時折、真理をつく。
返す言葉は見付からなかった。
「君はやっぱり、ズルいね」
一秒が経つ毎に、好き、が更新されていく。
独占してしまいたいどす黒い欲ですら、彼は言葉一つで浄化してしまう。
汚して穢しても、ずっとキレイなままなのだ。
もっともっと、痛め付けて汚してしまいたくなるのに、それと同じ強さで優しく甘やかして綺麗なままでいて欲しいとも願う。
矛盾した己の心は、両親を喪ったあの日から歪に歪んで治らないのだろう。
そんな心ごと抱き締めようとしてくれる架は、矢張り滑稽で馬鹿で、何よりも愛おしい自分だけの義兄で恋人なのだ。
「だから、何がだよ?」
首を傾げる架に微笑みを向ける。
きっと彼は、一生を掛けても翔の苦しみなど理解できない。
勝手に翔を温め、幸せにしておいて、二人だけの世界を夢見ることも許してはくれない。
翔のモノだと豪語しても、翔だけの架にはなってくれないのだ。
憎たらしいと思うが、反面、現実をしっかりと見据えているところが不良な見た目に反し、しっかりしていてキュンと胸が高鳴ってしまう。
「カケルのこと独り占めしたいのに、わかってくれないから。今日一日、君を独占したいな。カケルのこと、イヤらしく乱して僕だけのモノだって教え込みたい」
上目遣いに架を見詰め、くたり、と首を横に倒す。
架の弱い可愛らしい仕草を敢えて取ったのは、流されてくれるかな、という願望もあった。
「お、お前の言葉は遠回し過ぎんだよ。あんなヤンデレなこと言われてもわかんねぇよ、俺。つか、これから学校あんだろ。一日とか無理。せめて半日、いや、数時間?」
だが、グッと堪えた架に拒否され、どこまでも真面目な不良をどうやって泣かせてやろうか、と夜に思いを馳せる。
「じゃあ、学校が終わったらカケルのこと、独占してもいい? 僕の好きなこと、沢山いっぱいしても怒らない?」
言質を取っておこうと問い掛ければ、こくん、と頷く架に満面の笑みを向けた。
喜ぶ翔を見て架の強面も柔らかく綻んだ。
「俺だって。ショウとずっと、二人でいられたら、とか思うんだぞ。あ、愛してんだから当然だろ?」
神様が本当に存在するのなら、早く夜にして欲しいと願う。
それ程までに、もじもじする架が可愛かったのだ。
可愛い恋人を独占出来るのなら、クリスマスも悪くはないのかもしれない。
そんなことを思わされたクリスマスであった。
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