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閑話:暗闇に響くは君の声
暗闇に響くは君の声 03
しおりを挟む「……ショウ。結婚は、その、法律が整ったら、ちゃんとしよう。兄弟じゃ、嫌だし。プロポーズは、その時に改めてするから。お前もちゃんと覚悟決めとけ」
真っ赤な顔で握った手はそのままに見詰められた。
やっぱりズルいや、と翔の口元には笑みが浮かんだ。
世間はクリスマスに浮かれている。
一生その気分を味わうことなどないのだと翔は思っていた。
それでいいのだと諦観していたのだ。
自分を庇い死んでいった両親を思えば、人並みの幸せを望むことも少年にとっては罪深いことだった。
何も望まずに生きていくことこそ償いになるのだと勝手に思い込んでいた。
義兄となった男は、それすらも壊していく。
当たり前に幸せを翔に届けようと必死になっている架は、ひどく滑稽で、だからこそ、とても愛しくて愛おしくて、翔の内部を優しさで埋め尽くしてしまう。
「ねえ、カケル。メリークリスマス、だね」
きょとん、とした男の顔が面白くて、ふふ、と声をあげて笑った。
「そういや、今日だったな。何か欲しい物とかないのかよ?」
架の指に手の甲を撫でられる。
欲しい物など今まではなかった。
祈っても手に入らない物を欲しても虚しいだけだと解っていたのだ。
「決まっているじゃない。カケルのこと、全部丸ごと、僕のモノにしたいな。カケルがこれから歩む人生を僕にちょうだい?」
仕返しとばかりに色々な意味を含ませて言葉を紡いだ。
抱きたいという性欲も、これから先も独占したいという征服欲も、一緒に幸せを共有したいという願望も、諦めてきた全ての欲望を口にする。
「す、好きにしたらいい。どうせもう、俺の全部、お前のモンなんだから。体も心も、これから先の俺の全て、ショウにやる。だから、俺から離れたりすんな」
どうしてこんなに可愛いのだろう、と自分よりも強面の男にときめきが止まらない。
照れて伏せられる瞼が震え、唇も振動していた。
恥ずかしくて堪らないのだろう、と想像すると今すぐにでも犯したくなってしまう。
性行為に不慣れな身体を拓かせ、翔で彼の思考を埋めてしまいたい。
他のことなど考えられない程に翔にと溺れさせたかった。
「カケルが僕のことしか見えなくなればいいのに。僕以外の物を見るぐらいなら眼球を抉りたいな。僕以外の声を聞く耳なんて削いでしまいたいよ。二人だけの世界で生きられたらいいのにね」
思わず漏れた本音に架の目が見開いていく。
そして、ふっ、と笑った。
「お前、馬鹿だな。二人しかいなかったら餓死すんぞ。農家がいて漁師がいて酪農家がいて、料理してくれる人がいるから生きられるんだろ」
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