アリスと兎

Neu(ノイ)

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一章:不良アリスとみなしご兎

不良アリスとみなしご兎の幸せ 04

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わぁってら、と長田に言い放ち、靴を脱ぎ捨てて洗面所に向かう。
翔も後に続いた。
長田は靴を片付けていることだろう。




 洗面所で手洗いうがいを済ませ、食堂に案内した。
スタッフが荷物を運び入れているのだろう、がたがたと音が聞こえてくる。
思った以上に荷物は少ないので、すぐに終わるだろう。


 食堂に入ってすぐに、長方形のテーブルに向かい合って座る両親の姿が目に入る。

「やあ、翔。いらっしゃい。呼び捨てで呼んでも大丈夫かな?」

がたっ、と椅子から立ち上がり、父親が俺達を出迎える。

「はい、幸綯お父さん。愛架お母さんも呼び捨てで呼んで下さい」

はにかみながら答える翔に、両親はメロメロのようだ。
猫かぶりめ、と思うものの、仲が良いことは微笑ましい。

「まあ、しょうは可愛いのね。かけるは可愛気がないんだけど、そんなところが可愛いのよねえ」
「そうですよね。カケルはとても可愛らしいです」

母親は嬉しそうだ。
翔を隣に呼び寄せ、座らせた。


 この女、俗にいう腐女子なのらしい。
要するに、男同士のイチャイチャもじもじな恋愛模様にきゅんきゅんしてしまう人種のようだ。
道理で反対もしない訳である。


 目が輝いている母親を見るのは久しぶりだった。
仕方無く父親の隣に腰を落ち着かせる。
この親父もまた、男も女も中間もいける雑食とのこと。
母親と結婚する前は、相当凄かったらしい。
家にはまともな人間が一人もいないな、と嘆いているところに、長田がやって来た。

「奥様、残念で御座いましたね。先程、外で接吻を交わしておりましたよ、二人で」

さらり、ととんでもない爆弾発言を放り、他人事のようにキッチンに入って行く。

「……っ、おっオサダさん、わざわざ言うなよ! てか、おま、笑うなっ! 誰のせいだよ!」

両手をテーブルに叩き付け立ち上がる。
がたり、と音がした。
顔が熱くなるのを止められない。
事の元凶は、目の前でくつくつと喉を鳴らすようにして笑っている。
口許に手をやり、さも楽しそうである。

「あらあらあらあら! まだ未成年だから、青姦はダメよ? でも、庭なら大丈夫か。私有地だから。好き放題やりなさい、しょう」
「おいっ、それが母親の言う台詞かよ!」
「いいじゃない、カケル。愛架お母さんのお許しが出たんだから」
「良くねぇよ!」

頭が痛くなってきた。
どんな親だよ、とげんなりする。
父親に助けを求めるようにして見た。
が、失敗だったようだ。
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