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一章:不良アリスとみなしご兎
不良アリスは救世主になりうるか 07
しおりを挟む僕はチビ達を連れてホールに向かう。
架とオサダは先に向かっていた。
ホールに入ると、長方形の白いテーブルが8つ置かれていた。
真四角の部屋に、縦に四列、横に二列で並んでいる。その上には、既に料理と取り皿が用意されている。
有住家は、扉から一番遠いテーブルに着いているようだった。
架が此方に気付いたようで目が合った。
架の両親と思われる夫婦は、施設の最高責任者と話をしている。
僕からは遠くて何を話しているのかも、表情さえも、読み取れなかった。
司会者を務める従業員の一人が、マイクを手に前に出る。
謝辞を述べて、マイクが架の父親らしき中年の男性に渡された。
彼は、つかつかと革靴を鳴らし前に出て一礼すると、開口一番、とんでもないことを口にした。
「こんにちは、皆さん。私、有住 幸綯(アリス ヨシナ)と申します。突然ですが、今この瞬間より、この施設のオーナーとなりました。急なことで驚きのことかと思われますが、どうぞ宜しくお願いします。訳あって、従業員も一掃することになりました。この場が送別会ということになります。どうか楽しんで下さい」
架の父の発言に、周りはざわついている。
僕も内心驚きで一杯だった。
チビ達は訳が解っていないようで、首を傾げていた。
挨拶が終わり、一礼する架の父に、拍手が送られているのを遠くに感じる。
僕は信じられない思いで架を窺った。
彼も此方を見ていたのか、はにかみを向けられる。
まるで僕のために架が両親に頼んだかのような流れだ。
偶然にしては出来すぎている。
様子のおかしかった架のことを思い出す。
詰まり、そういうことなのだろう。
架はこのために、両親と仲直りをしたのか。
僕のために、彼は動いてくれたのだ。
胸が詰まる。
熱いものが込み上げてきて、どうしようもなく俯いた。
とん、と肩を叩かれ、顔を上げる。
其処には、架の父親が立っていた。
「やあ、はじめまして。翔君、だね? 私は架の父です。いつも息子がお世話になっているようで、一言お礼が言いたかったんだ」
ありがとう、と握手を求められる。
僕は戸惑いながらも、差し出された手を握り返す。
「阿東 翔、です。架君には、僕の方こそ良くして貰っています。あの、オーナーになられたと言うのは、本当なんでしょうか?」
「ああ、驚かせてしまったね。悪かったよ。でも、本当のことだ。君のことは、架からも聞いたし、申し訳ないが、調べさせて貰った。この施設の実態も、ね。知ってしまったら、放ってはおけないだろ? 買い取らせて貰ったよ。良く今まで、頑張ったね。君は自由だ。もう辛い想いをすることもないんだよ。私は、君を養子に迎えたいと、そう思っているんだが、どうだい? 家に来ないか? これはまだ架には言ってないんだけどね。家内も長田も了承している。君次第だよ」
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