18 / 68
一章:不良アリスとみなしご兎
不良アリスは救世主になりうるか 03
しおりを挟む「へえ、そうなんだ。ずっと触ってたいなあ」
「馬鹿か、お前は。学校だぞ、ココ。いい加減離れろよ」
へらり、と笑顔を向ける。
架は今更なことを述べて、僕の手を払った。
顔がうっすらと赤いのは、照れているからなのか。
「ふふ、それじゃあまるで、学校以外なら触り倒してもいいみたいだよ。色々触ってみたいところは沢山あるけど」
からかうように告げると、架は怖い顔で此方を睨んできた。
「宿題! やるんだろ? ノート出せよ」
架の様子に、これ以上は無理だと悟り、大人しく数学のノートと教科書を取り出した。
それは、午後の授業まで、後30分の時だった。
この日は、架の家族の話を聞いた。
夫婦揃って事業家でお金持ち。
けれど、何処か変わった人だと言う。
架は嬉しそうだった。
当たり前だ。
何年もすれ違っていた家族と、上手くいっている。
嬉しいに決まっている。
僕は、全然楽しくはなかった。
疎外感を抱いている。
勝手な感情だ。
僕には、共有することの出来ない時間。
悔しかった。
僕は笑顔の下で複雑な感情を持て余し、結局一日中、もやもやとした気分のままだったのだ。
僕の両親は、僕を庇って殺された。
通り魔事件に巻き込まれたのだ。
家族三人でショッピングモールに買い物に来ていた、その日。
帰る道中のことだった。
道路側から、父、僕、母、と並んで歩道を歩いていた。
周りには、ショッピングモールからの帰りなのだろう、同じように買い物袋を持った人達が駅までの道を歩いている。
僕は一人っ子だった。
母親は病気がちな人で、子宝にもなかなか恵まれなかったらしい。
そんな夫婦の間に漸く出来た子供が、僕だったのだ。
高齢出産で生まれた僕には、弟も妹もいない。
寂しいと思うこともあるが、両親がいること、それが僕の幸せだった。
ギャーッ、と唐突に悲鳴が響いてきた。
耳をつんざく断末魔のようだ。
前から聞こえてくるその音に、両親は眉を潜めて、何があったのかと目を凝らす。
道路に赤い染みが広がっていた。
黒い服を着た男が、通行人を切り付けている。
見るも無惨な光景だ。
僕は目を逸らした。
とても怖かったのを覚えている。
両手を強く握られる。
両親だ。
方向を変えて走り出した。
僕も意図を理解して、今歩いて来た道を引き戻すようにして走った。
力の限り走った。
だが、男は此方に気付いたのか、追い掛けて来たのだ。
今刺していた人間のことなど眼中にない。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。




塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる