アリスと兎

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
17 / 68
一章:不良アリスとみなしご兎

不良アリスは救世主になりうるか 02

しおりを挟む


甘い卵焼きに、負けないぐらい甘い、はにかみ架。
その甘い顔で、上目遣いに僕を見たりする。
無自覚だから余計にタチが悪い。
目付きが悪い癖に、笑うと柔らかい雰囲気になる。
可愛いと、思う。
僕にだけ向けられるその笑みが、嬉しい。
それを見るだけで、複雑な感情も昇華されるようだ。

「そう言えば、さっき、日曜日空けておけって言ったけど、デートのお誘い?」

思い出したように聞き遣れば、唐揚げに手を伸ばす。
甘いものの後だからか、少ししょっぱい。

「あー、いや。お前の施設に、両親と行くことになった。食事会に呼ばれたらしくて、俺も一緒に。お前がいねぇと、つまんないだろ」

頭を掻いてぼそぼそと答える架。
確かに、一般の人間を呼んでの食事会は頻繁にある。
日曜日に行われるのも事実だ。
だが、架の親が呼ばれているとは知らなかった。

「へえ。養子でも取るの?」

基本的に、食事会は養子を考えている人や、スポンサーとして援助してくれている企業の人間が呼ばれる。

「さあな。俺は知らねぇよ」

ふい、と視線を逸らされた。
何かがおかしいと思いつつも、具体的に何がおかしいとも指摘出来ないので、取り敢えずは泳がせることにする。

「話は変わるけど。数学の宿題、教えて欲しいんだ。有住君、解る?」

敢えて、自分から話題を変え、首を傾げてみせる。
架はホッとしたような表情を一瞬覗かせた。

「証明問題だろ? バッチリだ」

みてくれは不良のような架だが、勉強は出来る。
やはり、育ちが良いのだろう。
中学の頃から反抗していたようだが、勉強はきちんとやっていたらしい。
任せろ、と誇らし気に宣う架が愛しかった。
つい手が伸びる。
架の頬を片手が撫でていく。
架は一瞬身をびくつかせたが、特に抵抗もなく僕を見詰めていた。


 どうしてくれようか。
学校だと言うのに、微かに頬を染め、視線は逸らすも抵抗らしい抵抗もせずに、寧ろ心地良さそうに頬を撫でられている架は、反則だと思う。

「有住君。お肌すべすべだね。何か手入れでもしてるの?」

引き寄せられてしまう。
頬に手を添えたまま、顔を近付けていく。
こつん、と額がぶつかった。
その衝撃に我に返り、誤魔化すように尋ねる。
顔は近いままだ。

「男だぞ、俺は。んなもんするか。あー、でも、親が綺麗好きだからな。洗顔は小さい頃から強制的にやらされてた」

眉を潜めて嫌な顔をする架だったが、考えた後に、そう言えば、と付け足した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

処理中です...