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一章:不良アリスとみなしご兎
不良アリスは救世主になりうるか 02
しおりを挟む甘い卵焼きに、負けないぐらい甘い、はにかみ架。
その甘い顔で、上目遣いに僕を見たりする。
無自覚だから余計にタチが悪い。
目付きが悪い癖に、笑うと柔らかい雰囲気になる。
可愛いと、思う。
僕にだけ向けられるその笑みが、嬉しい。
それを見るだけで、複雑な感情も昇華されるようだ。
「そう言えば、さっき、日曜日空けておけって言ったけど、デートのお誘い?」
思い出したように聞き遣れば、唐揚げに手を伸ばす。
甘いものの後だからか、少ししょっぱい。
「あー、いや。お前の施設に、両親と行くことになった。食事会に呼ばれたらしくて、俺も一緒に。お前がいねぇと、つまんないだろ」
頭を掻いてぼそぼそと答える架。
確かに、一般の人間を呼んでの食事会は頻繁にある。
日曜日に行われるのも事実だ。
だが、架の親が呼ばれているとは知らなかった。
「へえ。養子でも取るの?」
基本的に、食事会は養子を考えている人や、スポンサーとして援助してくれている企業の人間が呼ばれる。
「さあな。俺は知らねぇよ」
ふい、と視線を逸らされた。
何かがおかしいと思いつつも、具体的に何がおかしいとも指摘出来ないので、取り敢えずは泳がせることにする。
「話は変わるけど。数学の宿題、教えて欲しいんだ。有住君、解る?」
敢えて、自分から話題を変え、首を傾げてみせる。
架はホッとしたような表情を一瞬覗かせた。
「証明問題だろ? バッチリだ」
みてくれは不良のような架だが、勉強は出来る。
やはり、育ちが良いのだろう。
中学の頃から反抗していたようだが、勉強はきちんとやっていたらしい。
任せろ、と誇らし気に宣う架が愛しかった。
つい手が伸びる。
架の頬を片手が撫でていく。
架は一瞬身をびくつかせたが、特に抵抗もなく僕を見詰めていた。
どうしてくれようか。
学校だと言うのに、微かに頬を染め、視線は逸らすも抵抗らしい抵抗もせずに、寧ろ心地良さそうに頬を撫でられている架は、反則だと思う。
「有住君。お肌すべすべだね。何か手入れでもしてるの?」
引き寄せられてしまう。
頬に手を添えたまま、顔を近付けていく。
こつん、と額がぶつかった。
その衝撃に我に返り、誤魔化すように尋ねる。
顔は近いままだ。
「男だぞ、俺は。んなもんするか。あー、でも、親が綺麗好きだからな。洗顔は小さい頃から強制的にやらされてた」
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