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一章:不良アリスとみなしご兎
みなしご兎は孤独か否か 06
しおりを挟む父親は、俺の前まで辿り着くと、震える手で俺の両肩を掴み、顔を覗き込んできた。
その目は既に潤んでいる。
「架。お父さんと会うの、嫌なんじゃないのか? 煩い親父は嫌いだって。お父さん、架に会わないように気を付けてたんだぞ? 架。お父さんのこと、許してくれないか。架の顔が見れないのは、凄く辛いんだよ」
肩を通じて、父親の震えが、想いが伝わってくる。
俺は首を横に振りながら、父親の二の腕を掴んだ。
「違うんだ、親父。悪いのは、俺だろ? 謝るのは、俺の方だ。ちゃんと、話し合えば、解り合えた筈なのに、向き合うことから逃げてた。俺が、悪いんだ」
父親の目を見詰めて、ごめんなさいと呟くように口にした。
途端に父親は首をブンブンと横に振りだす。
「そ、そんなことないんだ。お父さんとお母さん、架のことが大事だったから、つい干渉し過ぎたんだ。嫌な想いさせてごめんな? お母さんと話し合って、架の好きなようにさせようって、決めたんだよ。だから、また一緒にご飯食べよう。一緒に出掛けたり買い物したり、しよう。お父さんもお母さんも、架が大好きなんだ」
やっと首が止まったかと思えば、今度は力一杯に抱き締められる。
背中からも重みが加わった。
母親が、父親と挟むようにして俺を抱き締めていた。
「かける。母さん、今日ご飯作ったの。長田さんみたいに上手には出来なかったけど。みんなで、家族で食べましょ」
俺は無言で頷いた。
込み上げてくる熱いものを抑えながら、力強く頷いた。
「俺。食事の前に話があるんだ。親父とお袋に、頼みが、ある」
父親の胸板を押し返し、少し離れて貰う。
父親と母親の怪訝な顔を見てから、頭を下げた。
「俺が、二人と向き合おうと想うキッカケを作ってくれた奴がいる。ソイツを、助けたい。でも、俺の力じゃあ、どうにも出来ないんだ。お願いします! 力を、貸して下さい」
父親と母親はお互いに見合うと、同時に俺の肩に手を添えた。
「お父さんとお母さんに出来ないことはない。何故ならば、最強の夫婦だから。大丈夫、架のためなら、首相にだって掛け合うよ。なんだったら、アメリカの大統領でも良い。何でも言いなさい。必ず力になるから」
「有り難う。メシ、食おうか。腹減ってきた」
安心、安堵。
そういった気持ちが溢れる。
と同時に食欲も出てきたようだ。
父親と母親は金持ちだ。
そして、最大の武器はコネの広さ。
幅広く事業を展開しているからか、広く顔が利くのだ。
この日は久しぶりに家族と顔を合わせた。
一緒に食事をし、色々な話をした。
翔の話しも、俺の考えた計画と、二人にしてもらうことも、全てを両親に話すのだった。
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