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一章:不良アリスとみなしご兎
みなしご兎は孤独か否か 01
しおりを挟む2.守りたい存在
【みなしご兎は孤独か否か】
貴方の為よ――。
お前の為だ――。
そうやって偉そうに宣っては、進むべき道を勝手に決めようとする両親が、心底憎かった。
俺の人生だ。
自分で決める、そう思って、反抗もした。
嘆いては泣き崩れる母親を。
詰っては諭そうとする父親を。
何度も見た。
其れを、滑稽に感じる自分がいた。
しかし、彼奴には、もう出来ないことなのだ。
甘えることも、反抗することも、はたまた、顔を見ることでさえ、許されない。
もう、この世にはいないのだから。
このままでいいのだろうか、と。
そう思い始めたのは、クラスメイトの阿東 翔(アトウ ショウ)の生い立ちを聞いてからだ。
目の前で人を殺される。
しかも、其れが愛する肉親だったならば、人間はどうなってしまうのだろうか。
翔の性格がひん曲がっているのは、そのせいなのか。
例えば、愛する者を喪った人間が、それでも見い出した新たな愛しい者に拒絶されたとして、どうなってしまうのだろうか。
答えの見付からないスパイラルに陥る。
拒絶出来ないのだ。
どう頑張っても、翔を拒絶出来ない。
怖いのだ。
自分が拒絶したことによって、もしも消えてしまったら、と考えると恐ろしい。
あんな奴、と思いながらも、心の片隅では翔を必要としている自分がいるのだ。
もう、否定出来ないところまで来ている。
消えて欲しくない。
詰まりは、守りたいのだ。
守りたい気持ちの原点は、愛しさからくるのだろう。
だとしたら、翔を愛しく思っていることになる。
好き、なのだろうか。
もうずっと、同じ問いを繰り返していた。
翔を家に呼んでから一週間が過ぎた。
半ばムキになって「好き」だと告げてからの日数である。
あれから何事もなく日々は廻っている。
平和だ。
怖いぐらいに平和だ。
だが、変わったこともある。
今まで独り狼だった俺が、翔とつるむようになった。
俺からも翔に声を掛けるようになったのだ。
翔は嬉しそうにしているが、学校で裏の顔を出すことはないので、要注意である。
何を考えているのか、全く解らない人間だ。
油断は禁物である。
この日もまた、何事もなく終わろうとしている。
接点は学校のみだ。
学校が終われば、必然と一日は終わったようなもの。
俺は焦っていた。
何故かは解らない。
だが、このままでは駄目な気がしていた。
「今日、ウチ来るか?」
帰りのHR前。
席替えをしたにも関わらず、偶然か必然か、また前後になった席。
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