アリスと兎

一章：不良アリスとみなしご兎

不思議な国の兎さん 04

試すみたいに奴は言う。
ムカつくことこの上ない。
俺は奴の体を押しやった。
華奢な体を動かすのは意図も簡単だ。
上体を起こして奴を窺う。
相変わらず顔には笑みが浮かんでいる。

「お前、何なんだよ。愛しいって、こういう対象ってことか？」
「さあ、どうだろう。有住君は、僕を何だと思ってる？　今度抵抗しなかったら、その気があると見做して本当に襲っちゃうからね」

ふふ、と笑って奴は立ち上がる。
奴に見下ろされる形になった。

「今度は、抱かせてね、架」
「……ゼッテェ嫌だ。一人で盛ってろ」

俺も立ち上がり奴を見下ろしてやる。
奴は何事もなかったように扉を開けた。
俺を促して先に部屋から出て行った。


　あれから、俺と奴の攻防戦は続いている。
俺と奴の関係はただのクラスメイトだ。
それに加えて、少しだけ深いところで繋がっている、とでも言っておこうか。
奴の愛情表現は恐ろしく曲がっている。
憎悪からきた愛情なのだから仕方ない気もするが。
奴の愛情を受け止められるのは、多分俺だけだろう。