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一章:精神病×難病×家庭教師
嫉妬ですか? 05
しおりを挟むそう思うと、七海はスゴい奴だと、改めて感じてしまう。
七海の気持ちも大切にしなくてはいけないと、そう考えると何故だか胸が痛んだ。
どこかで解っている。
七海の気持ちには応えられないのだ、
大切な友人である。
どうしても、友人からは離れていかない。
ヒドく悲しい気持ちになり、斜め後ろの椎名さんを振り返る。
情けない顔をしていたのだろう。
彼は驚いたように眼を見開いた。
「どうしたの?」
椎名さんの口角は僅かに上がる。
ぎこちないけれど、俺の好きな椎名さんの優しい笑みだ。
くしゃり、と髪を撫でられた。
俺の黒髪に絡む椎名さんの指が、ゆっくりと動く。
それがまた、胸を熱くした。
大粒の涙が目尻を覆い、ボタボタと落下していく。
椎名さんは困ったように息を吐き出して、そして、俺を体ごと包み込んでくれた。
涙が椎名さんの服を濡らす。
「し、いな……さん」
「良いよ、泣いても。気持ちが一杯になって泣きたい時は、誰にでもあるよ」
うん、と頷いて、俺は椎名さんの背中に腕を回した。
ぎゅう、と縋るみたいに服を掴む。
思えば、難病になったことを知った時も、現実ばかりが重くのし掛かってきた。
あまりにも非日常な出来事に、涙さえ流せなかったのだ。
胸が痛んでも生きるためには前を向かなくてはいけない。
泣いたところで現実は変わらない。
どこかで自制を掛けていたのだろう。
椎名さんの過去を夢で見た時は無自覚だったが、今流れていく涙は自分の意思で流れていた。
一度溢れ出すと止まらない。
七海のことが胸を渦巻いたのをキッカケに、自分自身のことや椎名さんのことまで様々な想いが胸を占拠して苦しかった。
そんな状況の中でも、椎名さんの温もりに包まれていることに安堵している自分がいる。
この優しさにずっとずっと触れていたい。
「すっ……き。椎名さんと、一緒にいたいよ」
思わず口を吐いて出た台詞に、俺自身吃驚してしまった。
何を言ったのか理解して、顔中が熱くなる。
「しっ、しい、なさん! ごめ、おれ、違くて! その、好きって、まだどういう好きか、解んなくて……」
焦って顔を上げる。
必死で説明する。
椎名さんは無表情で俺のことを見下ろしていた。
「つぅ君。俺は、恋愛感情でつぅ君のこと、見てるよ。好きだし愛しいし、守ってあげたい。傍にいたい。触れていたい。閉じ込めてしまいたい。自分だけのものにしてしまいたい。……そういうの、受け入れられないなら、俺達離れた方がいいかもしれない」
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