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一章:精神病×難病×家庭教師
友人は大切に 06
しおりを挟む弁当箱の中の冷チンハンバーグをひょいっと箸で摘み、口に放る。
七海は、まさかと言いたげに驚愕の表情を作っている。
口をあんぐりと開けていた。
わざとらしい奴だが、俺は何も言えなくなる。
「うっせ。初恋って美味しいんですか、せんせ?」
「まーじーでー!? 天然記念物? おま、どうりで鈍感な訳だな!」
どうにかふざけた口調で返すも、頬が熱くなった。
この年で初恋もまだというのは、逆に恥ずかしい。
七海は目が飛び出そうな程に眼を見開き、次の瞬間には、テーブルを掌で叩き、笑い転げるのだった。
「そういう七海はどうなんだよ?」
「俺? んー、ナイショ。今はツウリラブだかんな、安心しろ」
「や、訳わかんねぇし」
お返しとばかりに聞くも、適当にはぐらかされてしまう。
俺は弁当を食べ終わり、手を合わせれば、片付け始める。
七海はゴミを袋に詰め込んでいる。
「そろそろ行くか。次の授業はなんだったかな」
俺が片付け終えたのを見計らい、七海は立ち上がった。
ふああぁぁ、と暢気に欠伸を溢しながら両腕を上に伸ばしている。
「数学だろ。小人さんの」
「ああ、高橋か。今日はツウリいるし、寝るかな」
けらけらと笑う七海を横目に立ち上がり、中庭から屋内に通じるアーケードを七海と並んで歩く。
「お前な。小人さん、泣くぞ?」
「いや、ツウリ君。生徒から小人さんとか呼ばれてる方が悲しいっしょ」
「……どっちもどっちだ」
言えてる、と七海が相槌を打つ。
因みに、数学担当の高橋教諭は、155cm程の初老の教師だ。
小さくて可愛らしいおじいちゃん教師である。
そんな他愛ない話を交わしつつ、教室まで戻るのだった。
七海と出会ったのは、一年の頃だった。
もう一年が経っただろうか。
共通点はそう無かったが、明るい七海に引っ張られるように関係は始まった。
要するに、彼はムードメイカーなのだ。
今では一番の仲良しになっている。
二年生の今、進路を決める時期に差し掛かり、学年内は少しピリピリとしていた。
俺と七海は努めて普通を心掛けてはいるが、やはり、そわそわしている。
進路相談に三者面談と、来週から立て続けに入っていた。
もう一年も経てば、この学校や仲間とも離れ離れかと思うと、胸の奥が切なくなった。
友人は大切にしようと、改めて思うのだった。
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