6 / 33
一章:精神病×難病×家庭教師
家庭教師と生徒 05
しおりを挟む「しっ、椎名、さん? ど、したの?」
状況を把握して、途端に俺の鼓動は五月蝿く暴れたてた。
ドキドキとして、顔が熱くなる。
声が上擦った。
同じ男なのに、椎名さんの体に触れても嫌悪感はなかった。
硬い筋肉が羨ましい。大人の体だと思う。
「愛しいな、って。なんだろうね、俺も解らん。でも、こうしたくなったから。理由、いる?」
嫌ならやめるよ、と笑うように告げる椎名さんは、やっぱり大人だ。
俺は首を左右に振る。
嫌ではない。
背中越しに感じる温もりは、心地好いぐらいだ。
「嫌じゃないよ。俺も、何でかは解んないけど。似てるのかな、俺と椎名さん」
「似てんだろうね。安心するし。ずっとこうしてたい」
耳元で囁かれる。
擽ったい気持ちが胸に溢れて、爆発しそうにドクドクと脈打つ。
「でも、勉強しないと。起きよっか、椎名さん」
俺は耐え切れずに起き上がろうとした。
「んー。もうちょっとだけ。お願い、つぅ君」
だが、椎名さんは、ぎゅうっと腕に力を籠めて、俺を離してはくれなかった。
切なそうな声色を耳元で告げられれば、抵抗出来なくなってしまう。
「しいなさん。どうしたの? 甘えん坊だ」
「うん、そうだね。嫌な夢、見たから。死ぬ寸前まで働いてた時の夢。ごめん、つぅ君。落ち着くまでだから」
首筋に鼻先を埋める椎名さんは、子供のようで不思議と愛しく感じた。
俺は小さく聞こえるかどうかと言う音量で、イイヨ、と呟いて、彼の胸に体を預けた。
「俺も、見たよ。椎名さんが、ずっと働いてる夢。おんなじかな? おかしいね」
「へえ、不思議なこともあるもんだ。つぅ君がいてくれて良かった。情けないけど、一人だったら正常でいられなかったかもしれんし」
大袈裟なと思う自分と、あの夢の通りならば、正常ではいられなくなるかもしれないと思う自分がいた。
「椎名さん。大人になれば、俺も誰かの役に立てたりするのかな? 俺、こんな体で、情けないけど、誰かに頼らないと生きていけないだろ? でも、頼ってばかりは嫌なんだ。俺だって、助けになりたいんだよ」
不思議と椎名さんには何でも話せた。
今まで誰にも言えなかった不安も打ち明けられる。
「もう十分、つぅ君は助けになってるさ。俺を外の世界に連れ出してくれた。仕事辞めてから引き込もって、何処にも出られなかった俺が、外を出歩けるようになったのは、つぅ君のお陰だ。大人の俺がしっかりせんといかんのだけどね」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
[BL]デキソコナイ
明日葉 ゆゐ
BL
特別進学クラスの優等生の喫煙現場に遭遇してしまった校内一の問題児。見ていない振りをして立ち去ろうとするが、なぜか優等生に怪我を負わされ、手当てのために家に連れて行かれることに。決して交わることのなかった2人の不思議な関係が始まる。(別サイトに投稿していた作品になります)

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる