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一章:精神病×難病×家庭教師
家庭教師と生徒 02
しおりを挟む医者は怖がることはないと言う。
薬で日常生活に支障はあまりないレベルまで持っていけるそうだ。
中にはエベレストを登った人もいるらしい。
だが、それが何の慰めになると言うのだろう。
これからの人生、病気というレッテルを抱えて生きていかなくてはならないのだ。
悪化して死んでしまう可能性も、少なからずある。
好きだったサッカーも、当然今までのようには出来ない。
折角、頑張って手に入れたレギュラーの座も、諦めなくてはならないだろう。
絶望しか、なかった。
だからと言って、誰のせいでもないのだ。
誰を責めたところで、俺の体は元に戻らない。
やるせない想いをぶつけるところなど、何処にもないのだ。
学校には普通に通っていたが、体育は見学。
重い荷物も持てないので友人に手伝って貰うという情けない有り様。
時には疲れてしまい、一週間程、家で寝込んでしまったこともある。
今まで出来ていたことが、急に出来なくなる。
其れがとても辛かった。
俺は次第に塞ぎ混んでいった。
他人が元気に動き回る姿を見る度に、心の中がどす黒くギスギスしていくようで、学校に行くのが嫌に感じられていた。
段々と学校から足が遠退いていた、そんな時に出会ったのが、椎名(シイナ)さんだった。
彼は家庭教師として両親に雇われたらしい。
母親の知り合いの息子さん、とのことだった。
学校にあまり行かなくなった俺を心配した両親の、精一杯の心遣いなのだろう。
椎名さんは、過労で精神を病んでしまい、ちょうど職を失ったところだという。
通院しながら社会復帰を目指しているらしい。
その第一歩として、俺の家庭教師が廻ってきた、とのことだ。
正直、最初は乗り気ではなかった。
ただ母親に、お互いのためになるから、と懇願されてしまえば、嫌とも言えずに、椎名さんとの家庭教師と生徒という関係が始まったのである。
その頃、週に二回程しか学校に行っていなかった俺は、週に三回の割合で、椎名さんと会っていた。
彼は、爽やかな好青年だったが、やはり精神的に弱っているようで、覇気も無ければ、目にも生気が感じられなかった。
其れでも、勉強はきちんと教えてくれたし、教え方も上手かった。
「椎名さんって、教えるの上手いね。ガッコの先生より解りやすいよ」
自分の部屋で、机に向かいながら、斜め後ろで椅子に座っている椎名さんに話し掛ける。
椎名さんに会ってから、もうそろそろ二週間が経つ。
慣れてきたと言うのか、一緒にいるのが楽だった。
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