元悪役令息の恩返し 〜 恋のキューピットをしているはずなんですが、もしかして空回ってます? 〜

kei

文字の大きさ
上 下
13 / 18

番外編 BLゲームの主人公事情(4)

しおりを挟む
 超がつくほどの純粋そして鈍感なアマナにオレを意識してもらう。

 そのために、オレは初歩の初歩”親しくなること”からはじめることに決めた。
 個人的にはまどろっこしいの抜きにして「好きだ。付き合ってくれ」と言いたい。でも、アマナという人物には伝わらないであろうことが日々思い知らされる事ばかりだった。
 もし、いま「好きだ。付き合ってくれ」なんて言ったところで「僕もlikeすきだよ! 一緒に行こう?」と返されてしまうだろうし、オレの「好き」は「恋愛的な意味」と伝えたところで「お互いのこと、わからないことあるから友達から…」とかなんとか言われるか、どう対応していいか戸惑って避けられそうな気がした。

 ならば、まずはアマナが答えるであろう

 そうと決めれば、やることはひとつ。
 転校生という自分の立場を利用して、いろいろ質問してアマナにオレという人物を知ってもらう。そして、アマナへの質問を混ぜて、好きなことや嫌なことなど情報を集める。

 ちょっとまどろっこしい上に、騙すようで気が引けるけど「好きな人のことを知りたい」というのは、抑えることができないものだし……なにせ、この学園でオレは異端分子だから友人と呼べる人物はまだできていないし、たとえ友人がいたとしても、アマナを深く知っている人物なんて……クンシラのほかにいない。

 身分差はあるし、めちゃくちゃ強いライバルはいるし。
 あーあ。なんていうやっかいな人を好きになってしまったのだろう。

 自分らしくない方法を取りながら、そう思うことはある。

 でも、恋に落ちてしまったのだから仕方がない。
 自分の気持ちに嘘はつけない。


 ◆


「クンシラと、ごはん?」 

 ある日、アマナは突拍子もない提案を瞳を輝かせながらしてきた。 

「うん! あれから2人とも、あんまり話せてないでしょ?」
「まぁ、そうだけど…」
「守ったり、助けあったり、手を取り合ったり…これからやってくるイベんん、試練をこなすためには2人は仲良くなった方がいいと思うんだよね!」
 
 納得できるような、納得できないような。
 ところ々、引っかかる言葉はあるけれど。

「ダメ、かな…?」

 オレがすぐに返事をしなかったからか、アマナの瞳が不安げに揺れる。

「ぐ」
 
 とにかくアマナはオレとクンシラとの仲を深めたいと考えているらしい。
 そして時々、アマナが「役に立ちたい」とつぶやく姿が浮かび上がる。
 きっとオレが「ダメ」と言えば、アマナは「わかった」と言うし、誰かが嫌がることをしようとしない。一緒に過ごせば過ごすほどわかる。
 純粋で、誰かのために一生懸命で。悪意でも悪戯心でもない、純真な気持ちでの行動。

「もちろん! 仲良くしたいと思ってたんだ!」

 いろいろ考えても結局は・・・”好きな人の期待に応えたい”となってしまう。

「ほんと!? よかったー!」

 ぱぁっと夜露よつゆに輝く花のように笑みを咲きほころばせたアマナに息を呑まない人間などこの世にいるのだろうか。
 まったく本当に、やっかいで魅力的過ぎて、困る。

「アンティ、都合の悪い日ある?」
「とくにないよ」
「僕もないから、やっぱりクンシラの風紀しごと次第だよね。交渉がんばるから期待しててね!」

 クンシラはアマナの誘いだったら、なにがなんでも仕事を終わらせて来るだろう。予定と言っても決まっているも同然だ。
 さてと、アマナにどうしたら仲良くしているように見えるのか、なにを話すべきか。知りたくもない相手ライバルについて考えるだけで、憂鬱である。

「おぅ…」
「あ、もう面倒になってる?」

 めずらしいな。と思った。
 考えがズレがちなアマナがこの件に関して、正しく察するなんて。

「大丈夫だよ。今日明日なんて言わないよ。部屋のお片付け、大変だから!」

 部屋のお片付け?

「まぁ、僕も共犯っていうか、僕が主犯っていうか。アンティといると貴族らしくいなくていいっていう開放感があってさ。お片付けとか手を抜いてるっていうか……さすがにクンシラには見せられないでしょ? この部屋」

 この部屋?

「クンシラは怒鳴ったりしないと思うけど、真面目な性格だからね」
「うん、そうだな。で、さ」

 オレは深く頷きながら、大きく言葉を区切る。

「アンティ?」
「ごはんって、食堂ではなく、この寮の部屋で食べるってこと?」

 パチパチを目を瞬かせるアンティを見ながら”この部屋”と足元を指差す。
 ほぼ確信に近い、いやな予感しかしない。

「そうだよ? あ、そっか。アンティ知らなかったよね? ごめん。風紀委員長とか生徒会とか、いわゆる役職付きの生徒の部屋は特別フロアになってて一般生徒の立ち入りは禁止なんだよ」

 申し訳なさそうに眉をへにょりと下げるアマナ。
 知らなかったけど、そうじゃない!

「食堂では注目されて話せなかったと思うけど、寮の部屋なら思う存分、気兼ねなくお互い話せるよ!」

 やっぱりアマナはズレていた。

「そーだなっ!!」

 なかばヤケクソである。
 そしてこれが”惚れた弱み”と言うもののかもしれない。

「お片付け、頑張ろうね!」

 勢いがついたオレの返事を、気合いの叫びだと思ったのかアマナはクスクスと楽しそうに笑った。
 ・・・ほんとに、ほんとに、本当にっ!!

「はぁー……」
「えっ、えぇ!? もう緊張してる? それとも不安になっちゃった?? えぇと、その、クンシラは怖くないから大丈夫だよ。それに片付けが間に合わなかったりしたら全部、僕のせいにしていいから。てか、ほぼ僕が散らかしているっていうか…」

 いろんな感情が混ざってぐちゃぐちゃになった心を落ち着かせるように顔をおおったオレを、アマナは一生懸命に励ましてくれた。




「王道主人公とは言え、恋するひとりの少年・・・ここは異世界転生者おとなとして完璧なサポートをしてみせる!」
しおりを挟む
Webコンテツ大賞、投票&閲覧ありがとうございました!
2023.12.1 kei

現在、番外編をのんびり不定期更新中
感想 0

あなたにおすすめの小説

【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい

市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。 魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。 そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。 不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。 旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。 第3話から急展開していきます。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

過食症の僕なんかが異世界に行ったって……

おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?! ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。 凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。

ヒロインの兄は悪役令嬢推し

西楓
BL
異世界転生し、ここは前世でやっていたゲームの世界だと知る。ヒロインの兄の俺は悪役令嬢推し。妹も可愛いが悪役令嬢と王子が幸せになるようにそっと見守ろうと思っていたのに…どうして?

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?

彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、 たけど…思いのほか全然上手くいきません! ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません? 案外、悪役ポジも悪くない…かもです? ※ゆるゆる更新 ※素人なので文章おかしいです!

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~

沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。 巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。 予想だにしない事態が起きてしまう 巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。 ”召喚された美青年リーマン”  ”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”  じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”? 名前のない脇役にも居場所はあるのか。 捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。 「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」 ーーーーーー・ーーーーーー 小説家になろう!でも更新中! 早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!

処理中です...