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番外編 BLゲームの主人公事情(4)

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 超がつくほどの純粋そして鈍感なアマナにオレを意識してもらう。

 そのために、オレは初歩の初歩”親しくなること”からはじめることに決めた。
 個人的にはまどろっこしいの抜きにして「好きだ。付き合ってくれ」と言いたい。でも、アマナという人物には伝わらないであろうことが日々思い知らされる事ばかりだった。
 もし、いま「好きだ。付き合ってくれ」なんて言ったところで「僕もlikeすきだよ! 一緒に行こう?」と返されてしまうだろうし、オレの「好き」は「恋愛的な意味」と伝えたところで「お互いのこと、わからないことあるから友達から…」とかなんとか言われるか、どう対応していいか戸惑って避けられそうな気がした。

 ならば、まずはアマナが答えるであろう

 そうと決めれば、やることはひとつ。
 転校生という自分の立場を利用して、いろいろ質問してアマナにオレという人物を知ってもらう。そして、アマナへの質問を混ぜて、好きなことや嫌なことなど情報を集める。

 ちょっとまどろっこしい上に、騙すようで気が引けるけど「好きな人のことを知りたい」というのは、抑えることができないものだし……なにせ、この学園でオレは異端分子だから友人と呼べる人物はまだできていないし、たとえ友人がいたとしても、アマナを深く知っている人物なんて……クンシラのほかにいない。

 身分差はあるし、めちゃくちゃ強いライバルはいるし。
 あーあ。なんていうやっかいな人を好きになってしまったのだろう。

 自分らしくない方法を取りながら、そう思うことはある。

 でも、恋に落ちてしまったのだから仕方がない。
 自分の気持ちに嘘はつけない。


 ◆


「クンシラと、ごはん?」 

 ある日、アマナは突拍子もない提案を瞳を輝かせながらしてきた。 

「うん! あれから2人とも、あんまり話せてないでしょ?」
「まぁ、そうだけど…」
「守ったり、助けあったり、手を取り合ったり…これからやってくるイベんん、試練をこなすためには2人は仲良くなった方がいいと思うんだよね!」
 
 納得できるような、納得できないような。
 ところ々、引っかかる言葉はあるけれど。

「ダメ、かな…?」

 オレがすぐに返事をしなかったからか、アマナの瞳が不安げに揺れる。

「ぐ」
 
 とにかくアマナはオレとクンシラとの仲を深めたいと考えているらしい。
 そして時々、アマナが「役に立ちたい」とつぶやく姿が浮かび上がる。
 きっとオレが「ダメ」と言えば、アマナは「わかった」と言うし、誰かが嫌がることをしようとしない。一緒に過ごせば過ごすほどわかる。
 純粋で、誰かのために一生懸命で。悪意でも悪戯心でもない、純真な気持ちでの行動。

「もちろん! 仲良くしたいと思ってたんだ!」

 いろいろ考えても結局は・・・”好きな人の期待に応えたい”となってしまう。

「ほんと!? よかったー!」

 ぱぁっと夜露よつゆに輝く花のように笑みを咲きほころばせたアマナに息を呑まない人間などこの世にいるのだろうか。
 まったく本当に、やっかいで魅力的過ぎて、困る。

「アンティ、都合の悪い日ある?」
「とくにないよ」
「僕もないから、やっぱりクンシラの風紀しごと次第だよね。交渉がんばるから期待しててね!」

 クンシラはアマナの誘いだったら、なにがなんでも仕事を終わらせて来るだろう。予定と言っても決まっているも同然だ。
 さてと、アマナにどうしたら仲良くしているように見えるのか、なにを話すべきか。知りたくもない相手ライバルについて考えるだけで、憂鬱である。

「おぅ…」
「あ、もう面倒になってる?」

 めずらしいな。と思った。
 考えがズレがちなアマナがこの件に関して、正しく察するなんて。

「大丈夫だよ。今日明日なんて言わないよ。部屋のお片付け、大変だから!」

 部屋のお片付け?

「まぁ、僕も共犯っていうか、僕が主犯っていうか。アンティといると貴族らしくいなくていいっていう開放感があってさ。お片付けとか手を抜いてるっていうか……さすがにクンシラには見せられないでしょ? この部屋」

 この部屋?

「クンシラは怒鳴ったりしないと思うけど、真面目な性格だからね」
「うん、そうだな。で、さ」

 オレは深く頷きながら、大きく言葉を区切る。

「アンティ?」
「ごはんって、食堂ではなく、この寮の部屋で食べるってこと?」

 パチパチを目を瞬かせるアンティを見ながら”この部屋”と足元を指差す。
 ほぼ確信に近い、いやな予感しかしない。

「そうだよ? あ、そっか。アンティ知らなかったよね? ごめん。風紀委員長とか生徒会とか、いわゆる役職付きの生徒の部屋は特別フロアになってて一般生徒の立ち入りは禁止なんだよ」

 申し訳なさそうに眉をへにょりと下げるアマナ。
 知らなかったけど、そうじゃない!

「食堂では注目されて話せなかったと思うけど、寮の部屋なら思う存分、気兼ねなくお互い話せるよ!」

 やっぱりアマナはズレていた。

「そーだなっ!!」

 なかばヤケクソである。
 そしてこれが”惚れた弱み”と言うもののかもしれない。

「お片付け、頑張ろうね!」

 勢いがついたオレの返事を、気合いの叫びだと思ったのかアマナはクスクスと楽しそうに笑った。
 ・・・ほんとに、ほんとに、本当にっ!!

「はぁー……」
「えっ、えぇ!? もう緊張してる? それとも不安になっちゃった?? えぇと、その、クンシラは怖くないから大丈夫だよ。それに片付けが間に合わなかったりしたら全部、僕のせいにしていいから。てか、ほぼ僕が散らかしているっていうか…」

 いろんな感情が混ざってぐちゃぐちゃになった心を落ち着かせるように顔をおおったオレを、アマナは一生懸命に励ましてくれた。




「王道主人公とは言え、恋するひとりの少年・・・ここは異世界転生者おとなとして完璧なサポートをしてみせる!」
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