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『---本年の鬼ごっこ大会の表彰式を行います』
色々あった鬼ごっこ大会ではあるが、こうして表彰式を心穏やかに見れると、ほんと頑張ったかいがあったと言うものである。
お前の立ち位置は何だ? 親か?
なんて言われそうだけど、元プレイヤーとして感慨深いものは感慨深いのだ。
無駄に異世界転生していない。
精神的には、ちょっとだけ年上なのは確実なのだから、大人ぶってもいいだろう。
そんな温かい気持ちに浸っているうちに、アンティの順番になった。
上位に入った表彰者は、壇上でスピーチがある。
だからこそ、好きな人のアピールっていうか、告白タイムができるっていうか……。
「ーーこうして、転校生であるオレがこの上位。ご褒美権のある順位に入れたのは、アマナ………オーアマナ・ウンベラのおかけです」
「・・・へっ!?」
突然、呼ばれた自分の名前に変な声が出た。
会場全体がザワッと波打つ。
「もちろん不正なんてありません。転校生で何も分からないオレに学園について…ルールとか、丁寧に説明してくれたんです。アマナ、ここにきて、伝えたいことがあるんだ」
「えぇ!?」
驚いて声が出る。
アンティの言う「ここ」って、壇上のことだよね!?
テキトーでデリカシーがないところもあるが、アンティは意外と律儀なところがある。
たぶん、感謝を伝えたいのだろうけど。
いま、じゃないよ!?
空気を読めないのは、王道主人公と言えば、そうなんだけど。
と、とりあえず、壇上に上がることため足を進める。
正確なことを言えば、上がりたくないけれど「これから何が起きるのだろう?」とワクワクとしている周囲から期待の視線などなど。期待されたら、答えたくなるのが人間という生き物である。つまり、壇上に上がらずにはいられない状況だ。
戦々恐々としつつ、アンティに示された場所に到着する。
「この場は、ご褒美権である。と、同時に、告白タイムでもあり、ライバルへの牽制にも使われると聞きました」
確かに、そう言いましたが?
その説明、いま必要じゃないよね??
「クンシラ風紀委員長。あなたに、伝えたいことがあります」
アンティがその言葉を口にすると、ざわつきが一気に大きくなる。
そん中でも、たった一つ、耳に届いて、聞こえる足音があった。
「……クンシラ」
僕のためじゃないけれど、幼馴染パワーというのは不思議なものでやっぱり、ほっとする。
アンティはクンシラが壇上に上がったことを確認すると、ふっと笑った。
ついに告白か…やれやれ。
って、じゃあ、俺はなんでここに? 結婚見届け人?てきな要員??
たしかに、勝手に恋のキューピットはしていたけど…気づいていたってこと?
いやいやいや、アンティに限って、まさか、ね。うんうん。
「アマナ」
色々、脳内フル稼働していた俺は、目の前に対して意識がなかった。
だから反応が遅れたんだと思う。
「オレは、オーアマナ・ウンベラのことが好きです」
え?と思った時には”言葉の爆弾”は落ちていたし、唇に温かいものが触れていた。
目の前には、空色の瞳が面白そうに、細く弧を描いていた。
「だから、これは宣戦布告ですーーーークンシラ風紀委員長」
ドッと会場が沸いて「カッコいい!」とか「男前!」とか色々あったんだけど、その中に幻聴MAXのものがあって「あの風紀委員長に横恋慕なんてスゲー!」とか聞こえるんだけど、僕の脳内処理がきっと追い付いていないから、そんな幻聴が聞こえてしまったんだろう。
とにかく、気づいた時には僕の身体はクンシラの腕の中に収まっていて、なぜかアンティは左頬を押さえていた。
何がなんだか。
どこで、なにをどうして?
ていうか? あれ? ん? えぇ?
「いてて…。ねぇ、アマナ。すぐに返事は無理だと思うから、とにかく、オレのこと知ってね?」
僕の恩返しは、どこからか、ズレていたのだろうか?
えーっと? アンティはクンシラに宣戦布告してて、僕に告白もしてて・・・つまり、どういうことだ??
頭の中で、現状を文字に起こしても、やっぱり脳内処理ができない。
「誰が、離してやるものか…」
それでも、この騒ぎの中でもよく聞こえた…この声が誰なのかなんて、1人しかいなくて。
何をどう間違えてたのかなんて分からない。
けれど、ひとつだけ。ひしひしと感じることがあった。
「もしかして、僕。空回りしている?」
もちろん、この時の僕は、二人から謎のアピール合戦されたり、生徒会メンバーに絡まれたり、他国の有力貴族から留学に誘われたり、これからもっと騒がしくなる日々を送ることになるなんて知るよしもなかった。
それはまた、未来の物語だ。
ーーーーーーーー END ーーーーーーーー
(おまけ、な設定こぼれ話)
●オーアマナについて
言動がズレているため分かりにくいですが、オーアマナは、女優さんの息子ということもあり、美人顔です。
前世を思い出したことにより、どうしても自分が平凡という感覚が抜けず、無自覚美人モンスターとなって、周囲を振り回しています。
●登場人物の名前について
BLゲーム【恋咲く花冠】にちなんで、花に関する名前になっています。
多少アレンジはしていますが、ほぼ安直な感じですので、気になった方は考察して、楽しんでいただければ幸いです。
●書き手のつぶやき
ここで一区切りしましたが、もろもろ機会があれば、アンティやクンシラ視点の番外編や未来の物語など書いてみたいなーと、ぼんやり考え中です。
色々あった鬼ごっこ大会ではあるが、こうして表彰式を心穏やかに見れると、ほんと頑張ったかいがあったと言うものである。
お前の立ち位置は何だ? 親か?
なんて言われそうだけど、元プレイヤーとして感慨深いものは感慨深いのだ。
無駄に異世界転生していない。
精神的には、ちょっとだけ年上なのは確実なのだから、大人ぶってもいいだろう。
そんな温かい気持ちに浸っているうちに、アンティの順番になった。
上位に入った表彰者は、壇上でスピーチがある。
だからこそ、好きな人のアピールっていうか、告白タイムができるっていうか……。
「ーーこうして、転校生であるオレがこの上位。ご褒美権のある順位に入れたのは、アマナ………オーアマナ・ウンベラのおかけです」
「・・・へっ!?」
突然、呼ばれた自分の名前に変な声が出た。
会場全体がザワッと波打つ。
「もちろん不正なんてありません。転校生で何も分からないオレに学園について…ルールとか、丁寧に説明してくれたんです。アマナ、ここにきて、伝えたいことがあるんだ」
「えぇ!?」
驚いて声が出る。
アンティの言う「ここ」って、壇上のことだよね!?
テキトーでデリカシーがないところもあるが、アンティは意外と律儀なところがある。
たぶん、感謝を伝えたいのだろうけど。
いま、じゃないよ!?
空気を読めないのは、王道主人公と言えば、そうなんだけど。
と、とりあえず、壇上に上がることため足を進める。
正確なことを言えば、上がりたくないけれど「これから何が起きるのだろう?」とワクワクとしている周囲から期待の視線などなど。期待されたら、答えたくなるのが人間という生き物である。つまり、壇上に上がらずにはいられない状況だ。
戦々恐々としつつ、アンティに示された場所に到着する。
「この場は、ご褒美権である。と、同時に、告白タイムでもあり、ライバルへの牽制にも使われると聞きました」
確かに、そう言いましたが?
その説明、いま必要じゃないよね??
「クンシラ風紀委員長。あなたに、伝えたいことがあります」
アンティがその言葉を口にすると、ざわつきが一気に大きくなる。
そん中でも、たった一つ、耳に届いて、聞こえる足音があった。
「……クンシラ」
僕のためじゃないけれど、幼馴染パワーというのは不思議なものでやっぱり、ほっとする。
アンティはクンシラが壇上に上がったことを確認すると、ふっと笑った。
ついに告白か…やれやれ。
って、じゃあ、俺はなんでここに? 結婚見届け人?てきな要員??
たしかに、勝手に恋のキューピットはしていたけど…気づいていたってこと?
いやいやいや、アンティに限って、まさか、ね。うんうん。
「アマナ」
色々、脳内フル稼働していた俺は、目の前に対して意識がなかった。
だから反応が遅れたんだと思う。
「オレは、オーアマナ・ウンベラのことが好きです」
え?と思った時には”言葉の爆弾”は落ちていたし、唇に温かいものが触れていた。
目の前には、空色の瞳が面白そうに、細く弧を描いていた。
「だから、これは宣戦布告ですーーーークンシラ風紀委員長」
ドッと会場が沸いて「カッコいい!」とか「男前!」とか色々あったんだけど、その中に幻聴MAXのものがあって「あの風紀委員長に横恋慕なんてスゲー!」とか聞こえるんだけど、僕の脳内処理がきっと追い付いていないから、そんな幻聴が聞こえてしまったんだろう。
とにかく、気づいた時には僕の身体はクンシラの腕の中に収まっていて、なぜかアンティは左頬を押さえていた。
何がなんだか。
どこで、なにをどうして?
ていうか? あれ? ん? えぇ?
「いてて…。ねぇ、アマナ。すぐに返事は無理だと思うから、とにかく、オレのこと知ってね?」
僕の恩返しは、どこからか、ズレていたのだろうか?
えーっと? アンティはクンシラに宣戦布告してて、僕に告白もしてて・・・つまり、どういうことだ??
頭の中で、現状を文字に起こしても、やっぱり脳内処理ができない。
「誰が、離してやるものか…」
それでも、この騒ぎの中でもよく聞こえた…この声が誰なのかなんて、1人しかいなくて。
何をどう間違えてたのかなんて分からない。
けれど、ひとつだけ。ひしひしと感じることがあった。
「もしかして、僕。空回りしている?」
もちろん、この時の僕は、二人から謎のアピール合戦されたり、生徒会メンバーに絡まれたり、他国の有力貴族から留学に誘われたり、これからもっと騒がしくなる日々を送ることになるなんて知るよしもなかった。
それはまた、未来の物語だ。
ーーーーーーーー END ーーーーーーーー
(おまけ、な設定こぼれ話)
●オーアマナについて
言動がズレているため分かりにくいですが、オーアマナは、女優さんの息子ということもあり、美人顔です。
前世を思い出したことにより、どうしても自分が平凡という感覚が抜けず、無自覚美人モンスターとなって、周囲を振り回しています。
●登場人物の名前について
BLゲーム【恋咲く花冠】にちなんで、花に関する名前になっています。
多少アレンジはしていますが、ほぼ安直な感じですので、気になった方は考察して、楽しんでいただければ幸いです。
●書き手のつぶやき
ここで一区切りしましたが、もろもろ機会があれば、アンティやクンシラ視点の番外編や未来の物語など書いてみたいなーと、ぼんやり考え中です。
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