白眼従者の献身と、辺境伯の最愛について

kei

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【2】

9、魔法適性

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 朝から大きな声を出したり考えることも多かったが、食堂で腹が満たされ、気分も切り替わった、、、はずだった。

「おい、お前って魔法適性あるのか?」

 偉そうに話しかけてきたグレン。こいつの存在を忘れていた。
 あー、めんどくせぇ。

「えーっと、俺の適性はゼロとまでいきませんが低いです」

 顔の筋肉が引きつりそうになりながら、丁寧に対応してやる。
 つーか、なんでお前、教室の中でもこっちに来てんだよ。サニルの冗談かと思ったが、こうなると友達が少ないのは真実だと確信するしかないぞ。
 俺たちはあえて目立たない後ろ側に座ることにした。
 しかし、そこにグレンがやってきて目が合ったかと思えば、ズカズカと近づいて来るなり、いきなり意味不明な絡みをはじめた。
 サニルはさすがと言うべきか、前の方でクラスメイト達に囲まれながら楽しくおしゃべりをしている。もしサニルの言葉を鵜呑みするならば、グレンはサニルからその交友関係の広げ方を学んだ方がいい。

「ふーん。適性が低いのか。それでも入学出来たってことは、よっぽど、ひいでててるってことか?」
「さ、さぁ……」

 俺の回答が意外だったのか、珍しく考えるような仕草をするグレン。
 ただ、たとえグレンの考えた通りだったとしても自分で「はい、そうです」なんて言うわけねぇだろうが。そもそも入学試験を経てからの合格基準や採点は明確に公表されてないんだから、もしみずから宣言するとしたら、よほどの自信家かバカだ。
 あー…落ち着け。刺激しない、刺激しない。
 脳内で繰り返しつぶやきながら、従者らしく控えめに反応をするようにする。ちらりと視線を動かせば、クリストフは困ったように笑っていた。
 このまま、猫被りをしておけということか。

「クリストフのところは、魔法適性の精度ってどれくらいなんだ」
「そう、ですね……うちの領はそこまで魔法適性を重視していないので、測定する魔道具は旧式のままです。最新のものと比べたらやはり、精度はすこし落ちるかもしれませんが」

 魔法適性は、専用の魔道具で判断することができる。
 昔は神殿で神官長とか限られた人でしか出来なかった魔法適性だが、今は技術が発展して、魔道具で判断することができる。
 とはいえ、かなりの希少で高価な魔道具なので、辺境とはいえ持っているだけでも、実はかなりすごいことなんだが、こいつ、わかってないんだろうな。

「そうか。なら、アルード、望みはあるぞ! なんたって王立学校では常に最新のものを使用できるからな」
「はぁ゛?」

 で、なにをどう解釈して、そうなった。
 思わず、猫被りが取れた反応をしてしまう。だが、グレンは俺の従者らしからぬ反応を気にも留めていない。いやむしろ、視覚にも聴覚にも届いていないのだろう。

「もしせんひとつ、いや、まんひとつかもしれないが、お前の魔法適性が見つかるかもしれない。諦めるのはまだ早いぞ!」

 なるほど。グレンの頭の中で、俺は魔法適性がないと悲観している人間に見えたと。

 そういえば、こいつ・・・脳筋だったわ。

 我が道を行くグレンの思考回路を理解したくもないし、そもそも理解できないが…いつ、俺が魔法適性が無いとなげいていると受け取ったのかわからない。
 それに、たぶん、グレンなりの励ましのつもりなのだろう。だがしかし、まったく励ましにもなっていない。むしろ、けなしているだろう。これ。
 本人に自覚がないから、本当にタチが悪い。

「・・・」

 もともと適性について気にしたことはなかったが、この無駄な励ましをグレンがしているとか、腹の中がすげぇムカムカする。
 視界の端ではクリストフがますます眉を下げて、心配そうにこちらを見ていた。
 あー、くそ。わかったよ。

「…はぁ、そうですか」

 苛立ちをおおうようにした結果、平坦な声になってしまったのは仕方がないと思う。
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Webコンテツ大賞、投票&閲覧ありがとうございました!
2023.12.1 kei
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