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【1】
11、王立試験の
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「では、今より王立試験の合格者発表を行う」
いろいろあったが王立試験はつつがなく終えた。
試験は2日間、筆記と実技で分かれて実施し、その翌日に王立学校の掲示板に合格者の受験番号が掲示される。
覚えている限り、大きなヘマはしていないのでほぼ”合格”しているはずだ。もし試験点数的な部分で問題があったとしても貴族ルールが適用されているので”不合格”という事はないだろう。
そう頭で理解していても、心臓は落ち着かない。
「皆、自身の受験番号とよく確認するように」
王立学校の関係者の声をきっかけに受験者たちが一斉に掲示板前にひしめき合う。
受験者たちにとって、この合格発表が最後の試験のようなものでもある。掲示された合格者の発表は、順不同となっている。受験者にとっては探すのが一苦労どころではない、迷惑な名物だ。
だが、これには大人の事情が関わっている。
それは万が一、貴族が不合格になった場合、受験番号順にしてしまうと、前後にいた貴族の□□がいない、と気付いてしまう。そうなれば、あっという間に不名誉な噂が立ってしまうし、面倒な争いにも繋がる。そのために順不同にし、並びを分からなくしておけば気付かれることもないし、あとから繰り上げ合格しても目立つことがないという。
貴族というのは、本当に面倒な生き物である。
だが、王立学校も貴族たちにただ振り回されているわけではない。
実はこの合格者の発表の並びは試験の成績順だとも言われている。合格は筆記と実技の合格点なため、純粋に判断できるワケではないが、それぞれの力量を見極めるのことができる。例えばーーー
「やったー! 71A98、あったー!!」
声高々に叫んでいる亜麻髪ヤローのこととか。
俺の剣の実技試験の組み分けが一緒だったため剣の腕前はわかる。目立ちはしなかったが、そこそこの腕前。しかし、受験番号の位置は上位組だ。
つまり、頭が良い。アホっぽい行動をしているが、自分の行動により周囲がどのように反応しているのか、よく観察している。
さすが、”未来の宰相殿”ってことか。
「あっ!」
やば、目が合った。
「ねぇねぇ。君は確か、えーっと、辺境伯のハイマン家の付き人くんだよね!?」
人が混み合う中、あっと言う間に目の前に移動してくる。
そうして近づいてきたかと思えば、ベタベタと肩や背中を触ってきて馴れ馴れしい。
「あ、あぁ」
「ボクはカロストロ家の三男、サニルって言うんだ。剣技、同じ組だったからよく覚えている。君は百点満点の出来だったよー!」
「それはどうも……」
この人懐っこい笑顔と仕草はこの頃からすでに完成していたのか。
前回は、こいつに色々振り回されたから、因縁というか、因果というか。恐ろしいモノだ。
「アルード。自分の番号見つけた?」
「あ、いや」
「あぁー! ご主人様だ!!」
絡まれ疲れているところにクリストフがやってきた。サニルは目をキラリと輝かし、空気を読んで引くどころか、さらに騒ぐ。お前は、ほんと”権力者”好きだよな。
こうして試験会場などで、前回に関わりがあった見知った顔がいくつもあった。この場にいるのは当然と言えば、当然なのかもしれないが。知っているのと、知らずにいるのとは大きな違いだ。
「えぇっと、君は、カロストロ家の御子息だね」
「そう! ボクのことを知ってくれてるなんて光栄だね!」
「いえ。それはお互い様ですよ。あ、僕の従者に合格番号を確認させたいんだけど、いいかな?」
「んー。合格間違いなしだと思うけど、見て感動した方が良いもんね」
さきほどと打って変わって、パッと距離をとるサニル。ニコニコと笑ってこちらの様子を見ていたが、ほかに目星の人物でも見つけたのか「じゃ、また会おうね」と俺たちに声をかけると、人混みの中に消えていった。つむじ風のような男だ。
「……助かった」
ため息まじりにそう言えば、クリストフはふわりと笑った。
「あちらは王都一の商家で、王家御用達。アルード、いつもみたいに雑に扱えなくて、ふふっ珍しく困ってたね」
「うるせぇ」
これ以上面倒事に巻き込まれたくないと周囲を観察していると、顔をグイッと正面を向かせられてる。
「い”っ」
「ほらほら、受験番号探して?」
「・・・」
珍しいと言えば、クリストフの行動も珍しい。
こうして、雑に俺の視線を動かしたり。さっきみたいに、あからさまな圧をかけたりするのは。
さっきのサニルへの言葉には有無を言わせない圧をかけていた。
前回、サニルとクリストフは俺との問題を抜けば、良好だったような気がしていたが勘違いだったのだろうか。
「えーっと。アルードの番号は……」
俺のもつ受験票を覗き込むように見るクリストフは、いつも通りだ。
クリストフの言動は本当に時々よく分からない。
「お前は、俺より自分の番号見ろよ」
「ん? 僕はもう、見つけてるから。あとはアルードだけ」
「そうかよ」
受験番号の位置は、前回よりは上で、クリストフの次の組にいた。
だが着実に、俺は現在を変えていけている。
いろいろあったが王立試験はつつがなく終えた。
試験は2日間、筆記と実技で分かれて実施し、その翌日に王立学校の掲示板に合格者の受験番号が掲示される。
覚えている限り、大きなヘマはしていないのでほぼ”合格”しているはずだ。もし試験点数的な部分で問題があったとしても貴族ルールが適用されているので”不合格”という事はないだろう。
そう頭で理解していても、心臓は落ち着かない。
「皆、自身の受験番号とよく確認するように」
王立学校の関係者の声をきっかけに受験者たちが一斉に掲示板前にひしめき合う。
受験者たちにとって、この合格発表が最後の試験のようなものでもある。掲示された合格者の発表は、順不同となっている。受験者にとっては探すのが一苦労どころではない、迷惑な名物だ。
だが、これには大人の事情が関わっている。
それは万が一、貴族が不合格になった場合、受験番号順にしてしまうと、前後にいた貴族の□□がいない、と気付いてしまう。そうなれば、あっという間に不名誉な噂が立ってしまうし、面倒な争いにも繋がる。そのために順不同にし、並びを分からなくしておけば気付かれることもないし、あとから繰り上げ合格しても目立つことがないという。
貴族というのは、本当に面倒な生き物である。
だが、王立学校も貴族たちにただ振り回されているわけではない。
実はこの合格者の発表の並びは試験の成績順だとも言われている。合格は筆記と実技の合格点なため、純粋に判断できるワケではないが、それぞれの力量を見極めるのことができる。例えばーーー
「やったー! 71A98、あったー!!」
声高々に叫んでいる亜麻髪ヤローのこととか。
俺の剣の実技試験の組み分けが一緒だったため剣の腕前はわかる。目立ちはしなかったが、そこそこの腕前。しかし、受験番号の位置は上位組だ。
つまり、頭が良い。アホっぽい行動をしているが、自分の行動により周囲がどのように反応しているのか、よく観察している。
さすが、”未来の宰相殿”ってことか。
「あっ!」
やば、目が合った。
「ねぇねぇ。君は確か、えーっと、辺境伯のハイマン家の付き人くんだよね!?」
人が混み合う中、あっと言う間に目の前に移動してくる。
そうして近づいてきたかと思えば、ベタベタと肩や背中を触ってきて馴れ馴れしい。
「あ、あぁ」
「ボクはカロストロ家の三男、サニルって言うんだ。剣技、同じ組だったからよく覚えている。君は百点満点の出来だったよー!」
「それはどうも……」
この人懐っこい笑顔と仕草はこの頃からすでに完成していたのか。
前回は、こいつに色々振り回されたから、因縁というか、因果というか。恐ろしいモノだ。
「アルード。自分の番号見つけた?」
「あ、いや」
「あぁー! ご主人様だ!!」
絡まれ疲れているところにクリストフがやってきた。サニルは目をキラリと輝かし、空気を読んで引くどころか、さらに騒ぐ。お前は、ほんと”権力者”好きだよな。
こうして試験会場などで、前回に関わりがあった見知った顔がいくつもあった。この場にいるのは当然と言えば、当然なのかもしれないが。知っているのと、知らずにいるのとは大きな違いだ。
「えぇっと、君は、カロストロ家の御子息だね」
「そう! ボクのことを知ってくれてるなんて光栄だね!」
「いえ。それはお互い様ですよ。あ、僕の従者に合格番号を確認させたいんだけど、いいかな?」
「んー。合格間違いなしだと思うけど、見て感動した方が良いもんね」
さきほどと打って変わって、パッと距離をとるサニル。ニコニコと笑ってこちらの様子を見ていたが、ほかに目星の人物でも見つけたのか「じゃ、また会おうね」と俺たちに声をかけると、人混みの中に消えていった。つむじ風のような男だ。
「……助かった」
ため息まじりにそう言えば、クリストフはふわりと笑った。
「あちらは王都一の商家で、王家御用達。アルード、いつもみたいに雑に扱えなくて、ふふっ珍しく困ってたね」
「うるせぇ」
これ以上面倒事に巻き込まれたくないと周囲を観察していると、顔をグイッと正面を向かせられてる。
「い”っ」
「ほらほら、受験番号探して?」
「・・・」
珍しいと言えば、クリストフの行動も珍しい。
こうして、雑に俺の視線を動かしたり。さっきみたいに、あからさまな圧をかけたりするのは。
さっきのサニルへの言葉には有無を言わせない圧をかけていた。
前回、サニルとクリストフは俺との問題を抜けば、良好だったような気がしていたが勘違いだったのだろうか。
「えーっと。アルードの番号は……」
俺のもつ受験票を覗き込むように見るクリストフは、いつも通りだ。
クリストフの言動は本当に時々よく分からない。
「お前は、俺より自分の番号見ろよ」
「ん? 僕はもう、見つけてるから。あとはアルードだけ」
「そうかよ」
受験番号の位置は、前回よりは上で、クリストフの次の組にいた。
だが着実に、俺は現在を変えていけている。
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