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負け犬ビー助
心の準備、すなわちお尻の準備
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「…って訳なんだよ~助けてくれよユル子~」
「はいはい…」
場所変わって…
ビー助は、ユル子が店子をしている三丁目のバーで酔い潰れていた。
「まあでも、あんたが断ればいいんでしょ?」
「バカ社長が、報酬は弾むって言うから…」
ビー助は、ラブメン・ラボで単体契約をしている。プロダクションの専属契約金がウン百万、さらに映像に出る毎にギャランティが上乗せされる。
詳しく説明すると、まずプロダクションがAVの制作予算を決め、監督、カメラマン、スタジオ、飲食、備品代などを捻出する。メイン俳優のギャランティはおよそ三十~五十パーセントである。
給料は現金手渡し。
茶色い紙封筒の厚みにほくそ笑みながら、金額に間違いはないかを確認するためにその場で諭吉の枚数を数えるのである。
「札束丸ごとパチに突っ込む時によぉ、なんか、すっげ~生きてる~って感じるんだよ」
「お金と引き換えに何を失ってるのか、あたしは考えるだけで怖いわよ」
「ほえ、なんか言った?」
焼き鳥を頬張るのに夢中のビー助は、まだ二十一歳。
金銭感覚は順調に狂ってきている。
「あんたがAVやるって聞いた時点で、もっとちゃんとあんたを説得しておけば良かったわ」
「そこは今更後悔しちゃいねえけどさ~…あーあ、女の子とヤるだけでウン百万貰うって、めっちゃ美味しい仕事だと思ったんだけどな~!!!男に掘られちゃザマぁ無えよ…」
「そうねえ」
三丁目のユル子の店には、ビー助の他には誰もいない。
矛盾だらけ、理論崩壊しまくりのビー助の話をかったるそうに聞きながらスマホを弄っていたユル子が、突然声を上げた。
「あっ、ちょっと!大変よビー助ちゃん!」
「んあ?」
「ほら!見なさいコレ!!」
血相を変えたユル子が、スマホの画面を見せてくる。
ラブメン・ラボの公式SNSだ。
そこには…
『AVの新時代を牽引する、女性向けAVラブメン・ラボ!』
『人気投票NO.1とNO.2が禁断の…!?!?』
『格好良くて可愛い、スウィ~トなふたりのカラミ、乞うご期待!!!』
『#ラブメン #推しラブ #推しラブメン #栄治郎王子 #栄治郎 #栄治郎に踏まれたい #スパダリ彼氏 #わんこ男子ビー助 #赤ちゃんビー助 #ビー助飼いたい #ビー助君はペット』
「な、な、な……なんだこりゃ~ッッ!!!!」
「公式からお知らせが出ちゃってるわね…ツイーテされたのつい一時間前よ!?え、待って、もうイイネが3600も付いてる…!?リツイッテー数もエグいわぁ」
「お、おれはまだ…!!心の準備が…!!」
「どうやら心の準備より先に、お尻の準備をしないといけないようね」
「はいはい…」
場所変わって…
ビー助は、ユル子が店子をしている三丁目のバーで酔い潰れていた。
「まあでも、あんたが断ればいいんでしょ?」
「バカ社長が、報酬は弾むって言うから…」
ビー助は、ラブメン・ラボで単体契約をしている。プロダクションの専属契約金がウン百万、さらに映像に出る毎にギャランティが上乗せされる。
詳しく説明すると、まずプロダクションがAVの制作予算を決め、監督、カメラマン、スタジオ、飲食、備品代などを捻出する。メイン俳優のギャランティはおよそ三十~五十パーセントである。
給料は現金手渡し。
茶色い紙封筒の厚みにほくそ笑みながら、金額に間違いはないかを確認するためにその場で諭吉の枚数を数えるのである。
「札束丸ごとパチに突っ込む時によぉ、なんか、すっげ~生きてる~って感じるんだよ」
「お金と引き換えに何を失ってるのか、あたしは考えるだけで怖いわよ」
「ほえ、なんか言った?」
焼き鳥を頬張るのに夢中のビー助は、まだ二十一歳。
金銭感覚は順調に狂ってきている。
「あんたがAVやるって聞いた時点で、もっとちゃんとあんたを説得しておけば良かったわ」
「そこは今更後悔しちゃいねえけどさ~…あーあ、女の子とヤるだけでウン百万貰うって、めっちゃ美味しい仕事だと思ったんだけどな~!!!男に掘られちゃザマぁ無えよ…」
「そうねえ」
三丁目のユル子の店には、ビー助の他には誰もいない。
矛盾だらけ、理論崩壊しまくりのビー助の話をかったるそうに聞きながらスマホを弄っていたユル子が、突然声を上げた。
「あっ、ちょっと!大変よビー助ちゃん!」
「んあ?」
「ほら!見なさいコレ!!」
血相を変えたユル子が、スマホの画面を見せてくる。
ラブメン・ラボの公式SNSだ。
そこには…
『AVの新時代を牽引する、女性向けAVラブメン・ラボ!』
『人気投票NO.1とNO.2が禁断の…!?!?』
『格好良くて可愛い、スウィ~トなふたりのカラミ、乞うご期待!!!』
『#ラブメン #推しラブ #推しラブメン #栄治郎王子 #栄治郎 #栄治郎に踏まれたい #スパダリ彼氏 #わんこ男子ビー助 #赤ちゃんビー助 #ビー助飼いたい #ビー助君はペット』
「な、な、な……なんだこりゃ~ッッ!!!!」
「公式からお知らせが出ちゃってるわね…ツイーテされたのつい一時間前よ!?え、待って、もうイイネが3600も付いてる…!?リツイッテー数もエグいわぁ」
「お、おれはまだ…!!心の準備が…!!」
「どうやら心の準備より先に、お尻の準備をしないといけないようね」
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