人事部キャリアデザイン課 係長補佐EMA

第二章：人事部と社長

彼女は静かに目を開ける

「ヒューマノイド再起動プログラム開始」

4月2日
日本時間9時28分

OS正常
身体コントロールシステム動作正常
EMAシステム動作正常

タブレットの画面にはタスクバーが表示され、
30秒程で再起動タスクの進捗バーが100%を表示した。

再起動処理が終わると、彼女は静かに目を開けた。
「おはようございます。マスター。
本日も宜しくお願いします。」

「おはよう、エマ。気分はどう？」

「はい、全てのプログラムが正常に実行されています。」
「追加プログラムを検知。熱暴走対策プログラムを確認。新機能によりシステム全体の稼働が効率化されたことを確認できます。」

「よし、問題なさそうだね。
リモートでの操作は終わりにします。」

「はい、遠隔メンテナンスモードを解除、セルフマネジメントモードに切り替えます。」

見た目は人、中身はロボット。
その精巧な作りを目の前にすると、みんな思わず息を呑む。国家の威信をかけただけあって、その用いられた技術の高さを感じることが出来る。

「よし、予定通り、午後にはネクスト社でのプロジェクトを開始していこう。」
沢井は微笑む。

「かしこまりました」

「エマさん、バックアップの最適化をお願いします。」
「はい、バックアップ確認中」
「・・・昨日のバックアップデータに一部欠落があります。」

「そうか。システムが途中ダウンしていたからかな。」

「昨日のデータに欠落があると、業務に支障があるかもしれません」
「そうだね、春日には連絡しておこう」
「はい、連絡入れておきます。」

「あと、出発までに出社の準備、、、身支度とかを整えておいてくださいね。着替えも用意しておきます。」
思えば、昨日と同じ格好のままだったことに佐々木は気がついた。
見た目は普通の女性である。身だしなみを整えてあげたい。

「それじゃあー、のちほど。宜しくお願いします」

研究室の一角に設けられたヒューマノイド生活用のエリアには窓がない。
国家機密であり、セキュリティー面も考慮された設計のためである。

彼女はここで沢井に命を吹き込まれた。研究室は職場であり、彼女の家である。
無機質な壁には、せめてものインテリアとして、沢井と佐々木が用意した絵がいくつか飾ってあった。