17 / 17
5 勝利の女神
【最終話】約束のもの
しおりを挟む
「マコト、会場ってどっちかしらね」
母がこの校舎に来るのは初めてだ。
「たぶん、この建物の裏かな。」
マコトは母の先を歩いた。
「あらっ。」
「ねぇ、えまちゃんじゃない?」
母は先をいく僕の肩をトントンとたたいた。
母は校舎の入り口に立つ親子に声をかけた。
「ヤマダさん!」
「わぁ、サトウさん!ぇえー久しぶりー」
えまのお母さんに会うのはマコトも久しぶりだ。
「おめでとうございますー。えまちゃんまたマコトと仲良くしてあげてね」
思えばあの時も母がえまを見つけて声をかけたんだったな。
「マコト君、またよろしくね」
「えま、こちらこそ」
「あ、そういえば約束のもの返さないとね」
そういってえまはノートを取り出した。
「持ってきてくれたんだ、ありがとう。」
マコトはノートを受け取ってしみじみと眺めた。
こうして、志望大学に入学できた。
また、えまと同じ学校に通うことができる。
新生活がとても楽しみだ。
「さて、もう気が済んだかい」
おじいさんは訪ねた。
「ありがとうねー。私はもう思い残すことはないよ。」
祖母はマコトの晴れ姿に、胸がいっぱいだった。
目を細めて孫を見守った。
「じゃあ、わしらも行きますかね。」
「ありがとう、わるかったねワガママに付き合わせちゃって」
「いーんだよ。心残りが無くなってくれれば。それがわしの仕事だから」
「マコトじゃあね、元気でね」
祖母は自分の声が聞こえないとわかっていたが、優しい静かな声で話しかけた。
暖かい穏やかな風がマコトの顔を横切る。
散かけたさくらの花びらが静かに舞い上がった。
完
母がこの校舎に来るのは初めてだ。
「たぶん、この建物の裏かな。」
マコトは母の先を歩いた。
「あらっ。」
「ねぇ、えまちゃんじゃない?」
母は先をいく僕の肩をトントンとたたいた。
母は校舎の入り口に立つ親子に声をかけた。
「ヤマダさん!」
「わぁ、サトウさん!ぇえー久しぶりー」
えまのお母さんに会うのはマコトも久しぶりだ。
「おめでとうございますー。えまちゃんまたマコトと仲良くしてあげてね」
思えばあの時も母がえまを見つけて声をかけたんだったな。
「マコト君、またよろしくね」
「えま、こちらこそ」
「あ、そういえば約束のもの返さないとね」
そういってえまはノートを取り出した。
「持ってきてくれたんだ、ありがとう。」
マコトはノートを受け取ってしみじみと眺めた。
こうして、志望大学に入学できた。
また、えまと同じ学校に通うことができる。
新生活がとても楽しみだ。
「さて、もう気が済んだかい」
おじいさんは訪ねた。
「ありがとうねー。私はもう思い残すことはないよ。」
祖母はマコトの晴れ姿に、胸がいっぱいだった。
目を細めて孫を見守った。
「じゃあ、わしらも行きますかね。」
「ありがとう、わるかったねワガママに付き合わせちゃって」
「いーんだよ。心残りが無くなってくれれば。それがわしの仕事だから」
「マコトじゃあね、元気でね」
祖母は自分の声が聞こえないとわかっていたが、優しい静かな声で話しかけた。
暖かい穏やかな風がマコトの顔を横切る。
散かけたさくらの花びらが静かに舞い上がった。
完
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

俺たちの共同学園生活
雪風 セツナ
青春
初めて執筆した作品ですので至らない点が多々あると思いますがよろしくお願いします。
2XXX年、日本では婚姻率の低下による出生率の低下が問題視されていた。そこで政府は、大人による婚姻をしなくなっていく風潮から若者の意識を改革しようとした。そこて、日本本島から離れたところに東京都所有の人工島を作り上げ高校生たちに対して特別な制度を用いた高校生活をおくらせることにした。
しかしその高校は一般的な高校のルールに当てはまることなく数々の難題を生徒たちに仕向けてくる。時には友人と協力し、時には敵対して競い合う。
そんな高校に入学することにした新庄 蒼雪。
蒼雪、相棒・友人は待ち受ける多くの試験を乗り越え、無事に学園生活を送ることができるのか!?
彗星と遭う
皆川大輔
青春
【✨青春カテゴリ最高4位✨】
中学野球世界大会で〝世界一〟という称号を手にした。
その時、投手だった空野彗は中学生ながら152キロを記録し、怪物と呼ばれた。
その時、捕手だった武山一星は全試合でマスクを被ってリードを、打っては四番とマルチの才能を発揮し、天才と呼ばれた。
突出した実力を持っていながら世界一という実績をも手に入れた二人は、瞬く間にお茶の間を賑わせる存在となった。
もちろん、新しいスターを常に欲している強豪校がその卵たる二人を放っておく訳もなく。
二人の元には、多数の高校からオファーが届いた――しかし二人が選んだのは、地元埼玉の県立高校、彩星高校だった。
部員数は70名弱だが、その実は三年連続一回戦負けの弱小校一歩手前な崖っぷち中堅高校。
怪物は、ある困難を乗り越えるためにその高校へ。
天才は、ある理由で野球を諦めるためにその高校へ入学した。
各々の別の意思を持って選んだ高校で、本来会うはずのなかった運命が交差する。
衝突もしながら協力もし、共に高校野球の頂へ挑む二人。
圧倒的な実績と衝撃的な結果で、二人は〝彗星バッテリー〟と呼ばれるようになり、高校野球だけではなく野球界を賑わせることとなる。
彗星――怪しげな尾と共に現れるそれは、ある人には願いを叶える吉兆となり、ある人には夢を奪う凶兆となる。
この物語は、そんな彗星と呼ばれた二人の少年と、人を惑わす光と遭ってしまった人達の物語。
☆
第一部表紙絵制作者様→紫苑*Shion様《https://pixiv.net/users/43889070》
第二部表紙絵制作者様→和輝こころ様《https://twitter.com/honeybanana1》
第三部表紙絵制作者様→NYAZU様《https://skima.jp/profile?id=156412》
登場人物集です→https://jiechuandazhu.webnode.jp/%e5%bd%97%e6%98%9f%e3%81%a8%e9%81%ad%e3%81%86%e3%80%90%e7%99%bb%e5%a0%b4%e4%ba%ba%e7%89%a9%e3%80%91/
僕は 彼女の彼氏のはずなんだ
すんのはじめ
青春
昔、つぶれていった父のレストランを復活させるために その娘は
僕等4人の仲好しグループは同じ小学校を出て、中学校も同じで、地域では有名な進学高校を目指していた。中でも、中道美鈴には特別な想いがあったが、中学を卒業する時、彼女の消息が突然消えてしまった。僕は、彼女のことを忘れることが出来なくて、大学3年になって、ようやく探し出せた。それからの彼女は、高校進学を犠牲にしてまでも、昔、つぶされた様な形になった父のレストランを復活させるため、その思いを秘め、色々と奮闘してゆく
消えたい僕は、今日も彼女と夢をみる
月都七綺
青春
『はっきりとした意識の中で見る夢』
クラスメイトは、たしかにそう言った。
周囲の期待の圧から解放されたくて、学校の屋上から空を飛びたいと思っている優等生の直江梵(なおえそよぎ)。
担任である日南菫(ひなみすみれ)の死がきっかけで、三ヶ月半前にタイムリープしてしまう。それから不思議な夢を見るようになり、ある少女と出会った。
夢であって、夢でない。
夢の中で現実が起こっている。
彼女は、実在する人なのか。
夢と現実が交差する中、夢と現実の狭間が曖昧になっていく。
『脳と体の意識が別のところにあって、いずれ幻想から戻れなくなる』
夢の世界を通して、梵はなにを得てどんな選択をするのか。
「世界が……壊れていく……」
そして、彼女と出会った意味を知り、すべてがあきらかになる真実が──。
※表紙:蒼崎様のフリーアイコンよりお借りしてます。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
この度は、『ラッキーノート』の完結
おめでとうございます🎉
改めて、1話目から再読しました📖
ラッキーノートの持つ意味が分かった時
とてもあたたかくて優しい設定だな~と
思いました。
そして、ラストシーンが、今の季節に
合わせたように描かれていたことも
よかったです🌸
強いて言うなら、この後、マコトくんと
えまちゃんはどうなるのでしょうか?
それが、とても気になります💕
最後になりましたが、これだけの長編執筆
本当にお疲れ様でした💐
これからも発表されたら、読ませて頂きます📕
㊗️小説発表おめでとうございます🎉
今まで発表されたところまでの感想としてですが、
とても読みやすく、次はどんなふうに展開するのかな?と思いながら、読ませて頂いています。
そして、「ラッキーノート」とタイトルにもなっているくらいなので、多分、ラッキーノートは、ただのノートではなく、何か…この物語の核になるようなアイテムかな?なんて思ったりもしています。
(考えすぎでしょうか?😅)
この後も、執筆頑張って下さいね😊
次の投稿、楽しみにしています📕
ぐりちゃん
感想ありがとうございます!とても励みになります。
物語は、あと数話でエンディングを迎えます。
最後まで楽しんでいただけたら嬉しく思います。