ラッキーノート

ブックリーマン

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5 勝利の女神

勝負の朝

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静かな朝だった。

朝の6時。
今日は、青葉大学入試の試験日当日。

気持ちは不思議と落ち着いている。
食卓に向かうと、母がすでに朝ごはんの準備を済ませていた。
ちょうど一年前の朝もこんな様子だった。

トーストのいい香りがする。
「いただきます」
いかにも寝起きという声だ。

今日は特別な日ではない。
いつもと変わらず、太陽は東から登りそして西に沈んでいく。

きっと明日起きたら、また同じ光景が続いていくはずだ。そう思うと気持ちも楽だ。

家を出ようと靴を履いていると、母が後ろから声をかけた。
「マコト、最後だからね!しっかりやってきなさい」

「わかってるよ。大丈夫!」
母への返事というより、自分へ言い聞かせるようにマコトは言った。

玄関を出ると、日差しがささやかに眩しかった。マコトは目を細めた。


試験が行われる青葉大学の正門をくぐって校舎入り口に向かった。
周囲はみんなライバルだ。

ジャケットのポケットに手を入れながら歩くマコトの後ろから誰かが呼び止めた。
「マコト君、マコト君!」
大きな声で呼ぶその声は聞き覚えのある声だ!

「っわぁ!えま!」
「おはよう、マコト君」

「良かったぁ、試験前にマコト君に合えて」
「はい、これ」

そう言ってえまはマコトに手渡した。
「あぁ!ラッキーノート!」

見覚えのある表紙。
「どうして、、、?」

「ごめんね、もっと早く渡せれば良かったんだけど。」
えまは申し訳なさそうに続けた。
「冬期講習の時、取り乱した子がテキストとか散乱させたでしょ!」
「あの時、私のところに混ざっちゃったみたいでさ。次に会ったら返そうと思ってたんだけど、、、」

「いや、ありがとう!」
マコトはえまの話に被せるように言った。
「本当にありがとう!探してたんだ、嬉しいよ」

返ってきたラッキーノート、この一年の過ごしてきたことが走馬灯のように駆け巡った。
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