ラッキーノート

ブックリーマン

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3 不思議な力

アンラッキーノート

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夏期講習が始まった。
講師たちの授業にも一段と熱が入る。
前半での遅れを取り戻そうと、マコトは熱心に授業を受講した。

授業が終わった後は、20時まで開いている構内の自習室に行くのが日課となりつつあった。

「マコト君!」

後ろからマコトを呼ぶ声がした!

「マコト君、久しぶり!」

マコトは誰かに呼ばれた気がして、慌ててイヤホンを耳から外した。

「あっ!えま、久しぶり!」

えまに合うのは、この前の面談依頼だ。

「良かった、マコト君に会いたかったんだ」

「え、どうかした?」

「LINE交換してくれない!」

次に会ったらえまの連絡先を聞こうと思っていたが、
まさか、えまの方から聞いてくれるなんて。

マコトはすっかり意表を突かれた。

「お母さんが、マコト君のお母さんの連絡先知りたいんだって。」
「なんかスマホ壊れちゃって、番号わからなくなっちゃったみたい」

「あぁ、、、それで」

「後でマコト君のLINEにお母さんの連絡先送るからマコト君のお母さんに伝えてくれる?」
「うん、いいよ、交換しよう」

鞄の中からスマホを取り出そうとしたとき、ケースに何かが引っかかった。
無理やり勢いよく引っ張ったら、その表紙に鞄から何かが落ちてしまった。

バサ。

「あっ、落ちたよ」

えまがしゃがんで拾ってくれた。

「ラッキーノート?」

「あ、い、いやこれは」

マコトは表紙が派手なノートを見られたことに体温の上昇を感じた。

「こ、これは、もらったんだ。知らないおじいさんから」

何を慌てて説明しているのか。
言い訳みたいな態度を取っている自分がもっと恥ずかしくなった。

「へぇ、そうなんだ。おじいさん?」

これは完全にヘンなやつだな。
派手なデザインのノートを受け取ってしまったことを今更ながら後悔した。

「あ、連絡先」

話を変えようと、マコトは連絡先の交換をした。

「ありがとうー、お母さんにずっと頼まれてたんだ」

「これから自習?頑張ってね!」

「あぁ、、、また!」

「うん、バイバイ」

これは、ラッキーノートというより、アンラッキーノートだな。

「(どんなふうに思われたかなぁ。)」

マコトはそのことだけが気になって、自習室の席についてもその日は勉強に身が入らなかった。
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