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2 出会い
お礼にノート
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各地で梅雨明けが宣言された。
気温の上昇とともに、受験生達にとっては勝敗を分ける”天王山”と言われる季節が今年も訪れる。
2度目の夏。春以降気持ちが塞ぎ気味だったマコトであったが、先日のえまとの再会以降、徐々に受験生モードを取り戻しつつあった。
「(きょうも暑かったなぁ)」
バス停前の自販機のジュースが涼しげにマコトを見る。
誘惑に負けそうになっていたところ、タイミングよくバスが来た。
プシュー。ドアが開くとエアコンの涼しい風がマコトの顔をなでた。
「(今日はちょっと混んでるかなぁ?)」
仕事帰りのサラリーマンや学生がいつもより多く乗車しているように見えた。
あたりを見渡すと、一つ席が空いている。
一日座って勉強しているとはいえ、立って帰るのと座れるのとでは疲れが違ってくる。
座って、一息。
バスの中では暗記科目を行う事に決めているマコトはテキストを開いた。
数ページ進んだころだったか、いつの間にかに瞼が重くなり、うたた寝に入ってしまった。
「(あれ!?寝過ごしたかな?)」
ちょうどバス停に止まった時だった。
「(あ、良かった。まだか)」
マコトの降りるバス停まではまだいくつか先だった。
安心していたら、おじいさんが乗車してくるのが見えた。
杖を突いた紳士的なおじいさんだ。
空席を探しているようだが、空きはないようだ。
自然と体が動いた。
「あ、あの。この席よろしかったらどうぞ」
「これはこれは、ご親切にどうも。」
おじいさんはにっこりして会釈をした。
「(なんかばあちゃんを思い出すなぁ)」
おじいさんは、ゆっくりとした動作で席についた。
マコトは祖母のことを少し懐かしみながら、またテキストに目を戻した。
バス停を何個か過ぎた時、おじいさんが降車ボタンを押した。
「次、止まります。」
アナウンスが流れる。
「あ、そうそう。」
「君にこれを」
突然話をかけられたマコトは、その言葉が自分に向けられていることに一瞬気が付かなかった。
「お礼にこれを。」
おじいさんはマコトにノートを差し出した。
「いえ、そんな。」
「ちょっとハイカラだし、わしより君のほうが必要なんじゃないかな」
「はぁ」
おじいさんは、マコトの持っていた参考書を見ながらそう言った。
「がんばって!」
「はぁ(勉強頑張っれってことかな?)」
「なんか、、、すいません。」
おじいさんはニコッと会釈して降りて行った。
「(ノート?、席を変わったお礼にノート??)」
「(まぁ、ちょうど勉強に使うノートも切れそうだったし)」
パラパラとめくる。
見た目は普通のノートだったが、おじいさんの言う通り表紙がちょっと派手なデザインだ。
「(なんか派手なデザインだなぁ、、、『ラッキーノート』?)」
なんのブランドだろうか。表紙にカラフルな印刷で文字が書いてあった。
「(まぁ、、、受験生には縁起がいいかもな)」
良いことをすると、良いこと?があるんだなぁ。
そんなことを考えていたら、降車するバス停に着いた。
マコトは頂いたノートと読んでいたテキストを急いで鞄にしまって、バスを降りた。
気温の上昇とともに、受験生達にとっては勝敗を分ける”天王山”と言われる季節が今年も訪れる。
2度目の夏。春以降気持ちが塞ぎ気味だったマコトであったが、先日のえまとの再会以降、徐々に受験生モードを取り戻しつつあった。
「(きょうも暑かったなぁ)」
バス停前の自販機のジュースが涼しげにマコトを見る。
誘惑に負けそうになっていたところ、タイミングよくバスが来た。
プシュー。ドアが開くとエアコンの涼しい風がマコトの顔をなでた。
「(今日はちょっと混んでるかなぁ?)」
仕事帰りのサラリーマンや学生がいつもより多く乗車しているように見えた。
あたりを見渡すと、一つ席が空いている。
一日座って勉強しているとはいえ、立って帰るのと座れるのとでは疲れが違ってくる。
座って、一息。
バスの中では暗記科目を行う事に決めているマコトはテキストを開いた。
数ページ進んだころだったか、いつの間にかに瞼が重くなり、うたた寝に入ってしまった。
「(あれ!?寝過ごしたかな?)」
ちょうどバス停に止まった時だった。
「(あ、良かった。まだか)」
マコトの降りるバス停まではまだいくつか先だった。
安心していたら、おじいさんが乗車してくるのが見えた。
杖を突いた紳士的なおじいさんだ。
空席を探しているようだが、空きはないようだ。
自然と体が動いた。
「あ、あの。この席よろしかったらどうぞ」
「これはこれは、ご親切にどうも。」
おじいさんはにっこりして会釈をした。
「(なんかばあちゃんを思い出すなぁ)」
おじいさんは、ゆっくりとした動作で席についた。
マコトは祖母のことを少し懐かしみながら、またテキストに目を戻した。
バス停を何個か過ぎた時、おじいさんが降車ボタンを押した。
「次、止まります。」
アナウンスが流れる。
「あ、そうそう。」
「君にこれを」
突然話をかけられたマコトは、その言葉が自分に向けられていることに一瞬気が付かなかった。
「お礼にこれを。」
おじいさんはマコトにノートを差し出した。
「いえ、そんな。」
「ちょっとハイカラだし、わしより君のほうが必要なんじゃないかな」
「はぁ」
おじいさんは、マコトの持っていた参考書を見ながらそう言った。
「がんばって!」
「はぁ(勉強頑張っれってことかな?)」
「なんか、、、すいません。」
おじいさんはニコッと会釈して降りて行った。
「(ノート?、席を変わったお礼にノート??)」
「(まぁ、ちょうど勉強に使うノートも切れそうだったし)」
パラパラとめくる。
見た目は普通のノートだったが、おじいさんの言う通り表紙がちょっと派手なデザインだ。
「(なんか派手なデザインだなぁ、、、『ラッキーノート』?)」
なんのブランドだろうか。表紙にカラフルな印刷で文字が書いてあった。
「(まぁ、、、受験生には縁起がいいかもな)」
良いことをすると、良いこと?があるんだなぁ。
そんなことを考えていたら、降車するバス停に着いた。
マコトは頂いたノートと読んでいたテキストを急いで鞄にしまって、バスを降りた。
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