ラッキーノート

１ 旅立ち

動き出さない時計の針

「サトウさーん」
「サトウ、マコトさーん」

「あっ、、、」「ハイ！」

気持ちが入っていない返事だ。

新しい季節、新しい環境。

両親から与えてもらった”猶予の1年”。

本来であれば、気持ちを切り替えて励まなければならない。

マコトも、もちろんそのつもりであった。

「はい、出席は以上です。」
「皆さん、このクラスで一年頑張っていきましょうね！」

「では、続いて・・・」

しかし、”受験に失敗”したという事実、そして”祖母が突然亡くなった”という事実を
なかなか受け入れることができないでいた。

「・・・時間割の隣に書いてある教室に移動して・・・」
「授業は本館以外にも別館・・・・注意してくださいねー」

これからここで、頑張らなければいけないのだが、
すっかり上の空のマコトは、教室のライバル達をぼんやりと眺める。

30人、いや40人はいるだろうか。
知り合いは、当然ながらいないようだ。

それぞれ様々な事情があったに違いない。
自分とライバルたちを重ね合わせる。

本来はここにいるべきではないのに、、、。
そんなことをついつい思ってしまう。


チューターはテンポよくホームルームを進める。

季節は変わったが、自分の時計だけが止まってしまったかのような気持ちが続いた。

「・・・志望校面談がありますので・・・・」
「・・では、以上になります。」


マコトが受験勉強に向けて、もう一度アクセルを踏み込むまではもうしばらく時間がかかりそうだ。