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【 表 】
④
しおりを挟む「待って待って!」
シーツは一向に下に降りてこず空中散歩を楽しんでいるかの如く舞い続け、ようやく1本の木の枝に絡みついて動きを止めた。
どうにか回収できたが、無我夢中で走っていたからここがどこだかわからなくなってしまった。
元々家の周りから出たことがない上に、周りは同じような木々ばかり。方向感覚もなくなっている上に、更に雲が厚くなってきて太陽も見えない。土の匂いがさらに濃くなっていることから今すぐにでも雨が降りそうだ。
「……どうしよう」
闇雲に動いて逆に家から遠ざかってしまうのは怖いし、それを覚悟で歩いて万が一人がいる場所まで出てしまったら、この髪色のせいで変な人に捕まってしまうかもしれない。
風が冷たくなってきて、飛ばされて汚れたシーツを身に纏いその場に蹲った。
頭の中に思い浮かぶ人物はレイドだけ。
あぁ……わかっていたけれど、私は本当にレイドしか頼れる人がいない。
こんな状態でレイドにフラれて1人となってしまったとき、私は生きていけるのだろうか。
独りでいることの恐怖も相俟って、思考が深淵へと沈んでいくように思えた。
怖い。
怖い。
怖い。
独りは嫌。
どこにも行かないで。
置いていかないで
『莉世、俺達、ずっと一緒にいような』
「――――っ!」
突如頭の中で聞こえたその声に異様なほど驚き、走ってもいないのに心臓が痛いほど強く鼓動を打っている。
今の声は……何?
誰の声……?
どうしてこんなにも怖いの?
身が竦むほど、目の前が真っ暗になりそうなほどに、……いや、目の前が真っ赤になるほど、どうして今の優しい声に怯えているの……?
どうして……
「怖いよ……レイド……」
「――――……僕が怖いの?」
すぐ耳元で聞こえたその声に驚き顔を上げると、目の前には体の芯を凍らせるほど冷たい表情をしたレイドが立っていた。
その姿はいつも見る人の姿ではなく、角ど羽と尻尾が生えた竜人の姿だった。
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