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後日談 一生の不安 ‐レナードside‐②
しおりを挟む「俺のために、という理由ならば料理を作るよりも俺が作ったものをたくさん食べてほしいな」
「それじゃあいつもと変わらないですけど…」
「あぁ。いつもアンナは俺を喜ばせてくれているんだ。アンナが作るものを体の中に取り込みたいと思わないわけではないがそれよりもアンナの腹を俺で満たしたい」
「なんか言い方に語弊が…。ん~でもわかりました。レナード様がそんなに料理を作りたいっていうのならそれを取り上げるようなことはしたくないです。これまで通りお願いします!」
「あぁ、よかった…」
「仕事で疲れているのにいっつもたくさんご飯作ってくれるから少しでも手伝えたらなって思ったんですけど」
「その優しさだけで疲れなど消えてむしろアンナを抱く体力が漲るよ」
「ぅおぉ…」
もうすでに何度も何度も体を重ねているというのに、初々しい反応をするアンナが愛おしい。
ベッドにいることも相俟ってアンナへの愛欲が膨れていき、2人の体の合間に置いていた枕ごとアンナを抱きしめて軽く唇を食んだ。
「ッン…」
「他に、俺に質問はあるか?」
視界がアンナの藍色の瞳で埋まってしまうほどの距離で囁くと、その瞳が情欲で潤んだことが瞬時にわかった。
「えっと……い、今すぐ…、私と、イチャイチャ、したいですか…?」
「したい。アンナが俺の手でグズグズになるまで、イチャイチャし尽くしたい」
「ま、枕使って答えてくださいよぉ……ゥンンッ」
喋らせないようまた唇を指でなぞってからすぐに離すと、物欲しそうな熱が浮かんだ瞳が俺を見つめている。
この瞳を見て、かき立てられるほどの愛欲が浮かぶと同時にひどく安堵する。
アンナは今、俺が欲しいのだという、一瞬の安堵が。
「レ、レナード様は……私に聞きたいこと……ないの?」
「あるよ」
「ぇ、な、何…?」
俺達の体を隔てる枕が邪魔だが、アンナはきっとこれを使って答えたいのだろう。その意を汲んであげなければ。肌を合わせるのは寝着をすべて取っ払ってからでも遅くはない。
「アンナは、今から俺とキスがしたいか…?」
「なっ…!なんですかその質問は…!というかもうしてるし!」
「もっと濃密なドロドロのキスのことだよ。これが俺が今一番聞きたいことだ。…どうだ?〇か?×か?」
「~~~っ、ヒアッ!?」
囁き声でも聞こえる距離にアンナがいてくれると、華奢な体を容易く腕の中に囲える。腰を抱く手がほぼ無意識にアンナのパジャマを僅かに捲り、滑らかな肌を持つ腰を撫でると驚いたような高い声が至近距離で聞こえた。
少し怒っているように俺を睨むアンナがまた可愛い。
「なんでそんなこと……」
「今まで俺の一方的な思いでアンナにキスをしていた。アンナのこの柔らかい唇につい吸い寄せられ、舐めて、しゃぶって、舌を吸って、勝手にアンナの口内をグチャグチャにかき混ぜてしまっていただろ?だからきちんとアンナの思いを聞きたいんだ」
「い、言い方がエッチすぎます…!」
恥ずかしがるアンナを窘めるように触れるだけのキスをして、唇を触れ合わせたまま囁いた。
「教えて…?アンナ」
「むぅ~~~!!はいっ!!これが答えです!!」
突如アンナの唇の感触が失われ、目の前にはでかでかと書かれた「×」の字が広がった。
「――――……え……?」
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