不眠騎士様、私の胸の中で(エッチな)悦い夢を【R18】

冬見 六花

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後日談 一生の不安 ‐レナードside‐②

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「レナード様、明日ってお休みですよね?」


夜。
仕事を終えてすぐに帰宅し、咀嚼するアンナを愛でながらの食事を終えた後、お互い風呂から上がりいつも一緒に眠るベッドの上でアンナが少し気恥ずかしそうに言った。

休みだよ。
アンナが言うなら休みだよ。
休みじゃなくても休みだよ。

真っ先に脳内でそう答えたあとに「休みだよ」と努めて冷静に答えた。
するとアンナが嬉しそうに俺の腕に抱きついてきて、下着を着けていない胸が腕に当たった。
そのことで当然のようにムクリと雄の部分が起き出した。いや、結構前から起き始めているが本格的に覚醒しだした。

「明日、俺と何かしたいのか?」
「いや、あの、別にこれといってしたいとかじゃないんです…。ほら、最近立て続けに新規の注文が入っちゃって私忙しかったでしょ?でもそれが落ち着いたから……だから、その……」
「あぁ、なるほど。じゃあアンナは俺とゆっくりしながらイチャイチャしたいということかな?」
「っ!……は、はい」

正直に言うとすでに「イチャイチャしている」と言っていい空気なのだが、アンナの言う「イチャイチャ」はスキンシップ(濃厚)のことだとすぐに察した。
趣味で読んでいる恋愛小説のおかげで割と性知識はあるというのに妙なところが純粋で恥ずかしがり屋で、ただひたすらに可愛い。


「俺もアンナとずっと離れずにイチャイチャしたいと言おうと思っていたよ。でもアンナ、それは明日でなくて今からじゃダメなのか?」
「い、今からが……いい、です。……でも、その…」
「?」

俺の手を取って指で遊ぶようにもじもじと弄ってきた。
何かを言い淀んでいる様子を見て、俺がアンナにとって良くないことをしてしまったのかと一抹の不安が頭をよぎったが、アンナの恥じらう様子を見て一瞬で霧散した。

「どうかしたか?」
「あの、アレ……どうしたんですか?」
「アレ?」

アンナの視線を辿ってみると、家に帰ってすぐに寝室に放っていたディランからもらった大きな紙袋があった。
朝振りにアンナと会えた喜びで帰宅して以降その存在をすっかり忘れていた。

「あぁ、あの紙袋か」
「何か持って帰るの、珍しいなって思って……。だ、誰かからもらったんですか?」
「あぁ、そうだよ」

アンナの兄であるディランから…と言葉を続けようとしたが、それよりも明らかに気落ちしたようなアンナの表情を見て言葉が止まった。

「レ、レナード様は…、かっこいいし、優しいから、その……モ、モテるの、わかってるつもり、なんですけど……でも……えっと……」
「アンナ…?」
「あ、あんまり、他の女の人から何か受け取ったりとかは、その……」
「――――嫌、なのか?」

アンナの様子から見て明らかだというのに、あえて言葉にした。
するとアンナは図星をつかれたからなのか耳まで顔を赤らめて俯いた。

「嫉妬……しているのか?」
「~~~~っ、だ、だって……!」


胸の内に抑えることのできない喜色が溢れている。
それはきっと表情に表れてしまっていることだろう。それを隠すこともせずに俺の手を握っていたアンナの手をとり、顔が見えやすいよう頬を撫でながら髪を耳にかけた。

「だって……何?」
「……っ、だ、だって……レナード様は、わ、私の、なのに……」



あぁ、なんて可愛い独占欲なんだ…。
俺の中に常に蔓延るどす黒い嫉妬とはあまりに違う、可愛い嫉妬。

アンナの言う通り、俺の細胞にいたるまでの血肉も、生きる理由も、稼ぐ金も、もちろんこの心も、俺と言うものすべてがアンナのもの。


それなのにアンナは更に俺が欲しいと求めてくれている。
――――……そう思ったら胸の奥が沸き立つようなゾクゾクとした感覚が襲った。



「アンナ、安心してくれ。あれはディランがくれた物だから」
「に、兄さん…? ―――~~~っ!ご、ごめんなさい!私、めちゃくちゃ恥ずかしい勘違いを……!!」

羞恥心でなのかこの場から離れよう身じろぐアンナを素早く腕の中に閉じ込めた。
瞬時に感じるアンナの熱と、匂いと、柔らかさが飽きることなく心地いい。

「レナード様を疑うようなこと言って、怒ってます…?」
「怒る?まさか。むしろアンナの嫉妬が嬉しいとさえ思っている。だからといってアンナが妬いてしまうようなことはしないよ。今後は男女問わず何も貰わないことにする」
「そ、そんなことしなくてもいいですよ!でも女の人からのプレゼントとかはちょっと嫌かな…」

心配せずとも女性から何かを貰うなんてことはないだろう。
アンナと出会う前からリィタという存在を恐れて必要以上に接することはなかったが、アンナと想いを交わした今、仕事以外のことで女性と話すことすら鬱陶しく感じる。

俺のすべてはアンナのためにある。
だからアンナ以外のことに注力することなど、面倒この上ない。
その思いが表れているのか、以前は秋波を送られることもしばしばあったというのに最近では女性が近づくことすらない。


「――――…アンナ。改めてよく覚えておいてくれ。俺がアンナ以外を見ることなんて絶対にない。だが不安になったらいくらでも疑ってくれていい。その分俺は何度でも、この想いをさらに大きくして全身全霊でアンナに伝えてあげるから」
「さらに大きく……全身、全霊……」
「あぁ。俺の、全身、全霊を、全力で、だ。………嫌なのか?」
「ま、まさか!嫌なわけないです!わ、私だって負けませんよ!私の全身全霊をレナード様にぶつけちゃいますよ!覚悟してください!」
「覚悟なんて必要ないな。俺はいつだってアンナの全身全霊を受け入れられる。今すぐにだっていい」
「い、今すぐ……は、えっと、あ、そ、そういえば兄さんから何を貰ったんですか!?」

無理矢理話を逸らしたアンナもまた愛おしく、その意に沿ってあげるために一度ベッドから下りてディランからもらった紙袋を持ってまたベッドに戻った。

ディランのことだからきっと碌な代物ではないことはわかっている。
正直、これの中身なんかどうでもいいからアンナを愛したい。さっさと中身を見てしまおうと包み紙を粗雑に破って現れたのは……――――



「これ、枕ですかね……?」



不思議そうな可愛い声を漏らしたアンナがまじまじと俺が持つ枕に注視する。



枕は枕。
だがこれは所謂、イエスノー枕と呼ばれるものだった。




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