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俺の胸だ!③
しおりを挟むなんで!?
なんでそうなる!?恥ずかしいって言ってるのに!?
しかも上だってほぼ脱げてるのに!!
「ちょ、ちょっと待ってください!普通上から脱ぐんじゃないんですか!?」
「普通なんて知らない。アンナが上を脱ぐのが恥ずかしいというからそれならば下からと思ったんだ」
「だ、だって恋愛小説では全部上から脱いでますよ!下は最後の砦というか……」
「あぁ、そう言えば…」
パンツごとボトムスを脱がそうとしてきたレナード様の手を制しようとしたとき、何かを思い出したような声をあげた。
そしてボトムスに指をひっかけたまま話を続けていく。
「ディランがアンナに借りたというものを預かっている」
「え?に、兄さん…?何か貸した覚えがないですけど…」
「あぁ、勝手に借りたと言っていた」
「……あのバカ兄貴は何を勝手に借りて勝手に返したんですか?」
というか急になんで兄さんの話を?
「本だ」
「え、本?」
「あぁ。恋愛小説でなかなかおもしろいタイトルの本だったよ」
え。
ちょ、ちょ、ちょっと待て。
もしかしてのもしかしてだけど。
「とても官能的な……いや、芸術的な表紙の本だったな。アンナはああいった話が好きなんだな」
「ま、ま、まさか……そ、その本って……」
「あぁ。『ヌルヌルなのはムキムキのせい』という本だ」
「――――っっ!!!」
何してくれてんだあのアホバカ兄貴は―――!!!
人のモノ勝手に借りた挙句、レナード様によりにもよってあの本を渡すなんて……!
あとで100回ぶん殴る!
「あ、いや、あの本は確かに表紙もタイトルもエッチではあるけど、それだけじゃなくて、その、ストーリーが素晴らしくて…!」
「確かにタイトルに目が行きがちだが内容もとても素晴らしいものだったな」
「そ、そうなんです!エッチなところも魅力的だけどストーリーが……って、え?なんで内容知ってるんですか…?」
「俺も読んだからだ」
「よ、読んだ!?『ヌルムキ』を!?レナード様が!?」
「あぁ。勝手に読んですまない。おもしろくてすぐに読み終えてしまった。確かに女性向きの本だがあれは男でも楽しめるものだと思うが」
いやいやいやいや、違う。そうじゃない。
こんな屈強マッチョイケメンが『ヌルヌルなのはムキムキのせい』なんてエッチな本を読んでいるだなんて…!
なんかもうそれだけでエッチじゃないか!!
いろいろ衝撃が大きくて呆気にとられていると、――――スルリとボトムスがパンツごと引き抜かれてしまった。
「ヒャア!ちょ、なっ…!」
「そろそろ恥ずかしさも薄まった頃かと思ってな」
ライムグリーンの瞳が艶美に光る。
その目に視線を囚われたまま、ポスンとベッドに倒れ込んだ。
さっきも一度組み敷かれたが、今またさらに組み敷かれ、妖しく光るライムグリーンの瞳と頑強な褐色の体が自分の視界を覆っていることに筆舌尽くし難い気持ちが体中をかけ巡っている。
羞恥と、感動と、幸福と、愛欲。
――――そして僅かな恐怖。
それをすべて余すことなく見抜いているように、レナード様がニタリと嗤った。
「さぁ、アンナ。あなたが望んだように、俺の好きなように、アンナを抱こう。眠る俺がしたことなどすべて忘れて、今、この俺がすることを体に刻み込んでくれ」
ドロリとした目が自分にへばりつく。
望んでいた。
この目を自分は待っていた。
瞼を閉ざした彼から齎されたものでなく、
自分だけをじっとりと突き刺すように見つめるこの目を、待っていた。
私の気持ちこそ、きっとどこまでも重いのだろう。
彼を、この人を、レナード様、あなたを、自分と言う檻に閉じ込めてしまいたい。
手を広げ、レナード様が来てくれるのを喜々としていることを表した。
「レナード様のお好きなように、ドロドロの、グチャグチャの、ベトベトになるまで、……愛してください」
ゆっくりと近づき、素肌が露わとなっているお腹がピッタリとくっついて互いの熱をジュワリと溶け合わせた。
たったこれだけで気持ちがいい。
そうして当然のように唇を重ねる。――――その直前。
唇の上の空気を撫でるように、レナード様が囁いた。
「―――……アンナ、もっと俺に、堕ちておいで」
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