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31 俺の胸だ!
しおりを挟む自分のバカ正直さを呪ってしまう。
レナード様に夜な夜なされたことを思い出し、それを悟られないよう無意識に離れようとした体はガッチリと止められ今なお腕の中。
取り戻した甘やかな空気がどんどんまた消えていくのがわかる。だが、何度でも言うが私にイロイロしてきたのはレナード様なのだ。責められる謂れもなければレナード様が悔しがる必要もない。
「アンナ…?まさか体をまさぐられたとか……」
「え…えーと…」
「言ってくれ…寝ている俺は、アンナに何をしたんだ…?」
「た、たいしたことは……ちょっと胸を揉まれたり…とか」
「大したことだろ!俺に胸を揉まれてるんじゃないか!」
「で、でも起きてるレナード様は私の胸に顔を埋めたでしょ!」
「あれはアンナが俺の顔を胸に誘ったんだ!」
「だって高さ的にそうなっちゃったんだもん!嫌だったんですか?」
「嫌なわけあるか!柔らかいし良い匂いがするし……最高だったわ!」
「起きてるレナード様は顔を埋めてたんだから寝ているレナード様に怒らなくても……」
「顔も埋めたがこの手で揉みたいと思うに決まっているじゃないか!」
「決まってるの!?」
「決まっているに決まっている!」
「じゃ、じゃあ……今、揉みますか……?レナード様なら、その、いくらでも……」
「っ!」
抱きしめられながら上向くと、頬を赤らめながら戸惑っているレナード様がいた。
なんでちょっと困っているのだ。喜んで揉むと思ったのに。結構覚悟して言ったんだけど。……もちろんその先のことだってレナード様だけとしたい。
なのにレナード様は何か葛藤しているかのように何かを言おうとして言葉を噤み、そしてまた口を開いては閉じている。
「レナード様……胸、揉まないの……?」
「っ、い、今……アンナの胸を揉んだら、俺は絶対そこで止められないっ…!」
「な、なんで止めるの…?私は、その……レナード様となら、その……」
いいよ、という言葉は恥ずかしすぎてうまく出なかった。
だがレナード様に気持ちは伝わったらしい。太く黒い首から「ゴクッ」と嚥下する音がやけに大きく聞こえてきた。
「っぐ、ぅう…」
獣の唸り声のような苦し気な音が絞り出すように聞こえた。
事実、レナード様の表情は先程ダイニングでしていたように苦しそう。…いや、むしろ先程よりも苦しそうに見える。
「レナード様は…シたく、ない…?」
「めっっっっっちゃくちゃシたいよ……アンナを愛したくてたまらない…たまらなすぎて、死にそうぐらい、シたい…」
「そ、そんな切実なくらいに…」
「アンナが俺を求めてくれることが嬉しくて……、嬉しすぎて、俺はたぶん、アンナが壊れそうなほど抱いてしまうかもしれない……っ」
「ど、どんだけ…」
「アンナの胸だってほんとはものすごく揉みたいと思っている!ものすごく!!」
「っむ、胸の、ことはもういいですから……!言っときますけど大した胸じゃないですからね!」
「何を言う!この世の至高とも言える胸だ!」
「絶対違うから!ほんと量産的な胸だから!」
「アンナの胸を量産して世に出すわけないだろ!俺の胸だ!」
「違う!そうじゃない!」
「とにかく……、今は、俺を、煽らないでくれ……!」
絞り出された声は切実だった。
レナード様の生来の真面目さが自身を苦しめているのがわかる。
――――…だけど
ゆっくりと抱きしめられていた状態から僅かに体を離し、レナード様の手を取った。
私の行動に戸惑いを見せていることがわかる。だけど私の一挙手一投足すべてを刮目しているのもわかる。
私のことを思って、本能が剥き出しにならないようにしてくれることが嬉しい。
必死に理性を働かせてくれていることが嬉しい。
でもこの人は、まだわかっていない。
フニュン。
と、マヌケな効果音が似合うほど拙く、レナード様の大きな手を自分の左の胸に押し付けた。
「――――…っ」
「レ、レナード様っ!わ、私…、あなたの全力を受け止めるって、さっき言いました!」
「ぁっ……っ」
「それに、レナード様も全力をぶつけるって言ってくれました…!」
自分でもわかるほど脈打つ鼓動はきっとレナード様の手にも伝わっていることだろう。
何せ自分が作った部屋着は、下着をつけなくても突起がわからないようにしているため、この服を脱いだらすぐに素肌なのだ。
「そ、それに…レナード様が、私のこと…好きって、こと……ぃ、いっぱい、いっぱい、実感させて、ほしい……です」
「ゴクッ…」
「だ、だから……そ、その、こんな、言い方……合っているかわからないですけど……」
耳が熱すぎることを自覚している。
声が上擦っていることを自覚している。
視界が滲むほど涙が出ていることを自覚している。
胸に押し付けている大きな手を掴む手が震えていることを自覚している。
それでも、私は逃げ出さない。
この人を、どこまでも追い求める。
「私のこと、めちゃくちゃに、壊れちゃうくらいに、…レナード様の好きなように……抱いてほしい、です」
熱すぎる熱を持ちながら、
上擦る声をさらに震わせながら、
溢れそうな涙を隠すことなく上向いて、
胸をわし掴む手に縋りつくように、レナード様に言った。
「アンナは、すごいな……」
返ってきたのはとても淑やかな声。
だけどそのライムグリーンは妖しく光り、飢えた獣を思わせるものだった。
「こんなにも、俺を狂わせるだなんて……」
ゴクリと息を呑んだのは今度は私。
嚥下する喉の動きすら見つめられ、そして何故だか恍惚に微笑まれた。
「怖がらなくていい。ひどくなんてしないよ。俺は、アンナを、甘やかしたい。ただそれだけなのだから」
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