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嫉妬で頭がイカレそうだ③
しおりを挟むレナード様が意味がわからないことを言って思わずツッコミをいれてしまった。
なんだか力が抜けてしまい、起き上がって2人してベッドの上に座った。頭を抱えて愕然としている様子のレナ―ド様の手を握ってあげると、縋るように私の手を握り返してくれた。
「レナード様、あの、何を意味わからないことを言ってるんですか?」
「だってアンナの初めてを奪った男がいるだなんて……許せない」
「いやだからそれあなたなんで。あと初めてってなんか意味合い違く聞こえます。そこまで奪われてないです」
「当然だ!他の男に奪われてたまるか!」
「だから他の男じゃなくてあなたなんだってば!!」
どうしよう。レナード様がなんかアホっぽくなってきてしまった。
だけどそれがなんか可愛いと思っている私はかなり重症かもしれない。
それにこんなアホっぽくなった原因が自分だということが密かに嬉しい。
「えっと、心配せずともレナード様以外とキスどころか一緒に寝ることさえしたことないですからね。だから安心してください」
「安心など、できるはずがないっ…!憶えていないんだぞ!きっとアンナが拙く舌を絡めて慣れぬ息苦しさに戸惑う様子さえ俺は憶えていないんだ!」
「そ、そんなことなかったもん!……たぶん」
「憶えていないのなら他の男に奪われたのと同義だ……。くそ、寝ていた自分が憎くてたまらない…。俺は金輪際眠らない!」
「アホかぁ!」
レナード様の言い分もわからないでもない……いや、やっぱわからない。
だって結局キスしたのは自分じゃないか。それを喜んでくれよ。
「アンナ……眠っている俺と先程の俺とのキス、どちらがよかったんだ…?教えてくれ」
「だからどっちもレナード様でしょうよ!比べる意味がわからないよ!」
「俺だが俺じゃないんだ。言ってくれ、アンナ。どっちがよかったんだ…?」
仔犬みたいに縋るような目で私を見つめながらゆっくりと腰を抱いてくる。
さっきからレナード様が壊れてしまっているように思うけど、やっぱり可愛いと思ってしまう。そんな思いを伝えるように私を抱きしめるレナード様の逞しい体に腕を回し、広い肩に額を当てた。
フワリと香るレナード様の匂いをもっと嗅ぎたくてスリスリと顔を揺らしてみると、優しく頭を撫でられた。
「そんなの、さっきのキスに決まってるじゃないですか…」
「本当に?」
「だって、両想いだってわかってのキスだもん…。レナード様が眠っていたとき、夢の中で誰とキスをしているつもりなんだろうって悶々と考えてたんですよ…?ソフィー様と夢が繋がってるってわかったときレナード様がソフィー様と…なんて思ったこともあるし…」
「俺が他の女性となんて夢だろうとありえない!!夢の中でもアンナとキスをしていたに決まっているじゃないか!」
「え、そうなの…?」
「あぁ。一緒に眠るようになったときは既にアンナがリィタだとわかっていたから、毎夜アンナと…」
「私と…?」
妙なところで言葉が切れ、続きを促すとレナード様がとても歯切れ悪く言葉を続けた。
「アンナと…愛し合うという…都合のいい、本当に夢のような夢を、毎夜見ていたんだ」
快眠機能付き愛玩人形なんかじゃなかったんだ…!
噛み締めるように喜びを感じていると、そんな私のことをレナード様が目を細めながら見つめていた。
「今ので少々わかったと思うが俺はアンナへの独占欲を止められない。生涯アンナだけを見つめ、アンナに俺の全力をぶつけることになるんだぞ?しつこく聞いて悪いが本当にそれでいいのか?」
「いいですよ。いっぱい独占してください!レナード様の全力をまるっと余裕で受け止めてあげます!」
褐色の頬を僅かに赤らめ嬉しそうにしている表情を見て、思わず私も頬が緩んだ。
「では遠慮なくアンナにぶつけよう。アンナの初めてのキスを奪えなかった悔しさも含めて余すことなく俺のすべてをぶつけるよ」
「いやだから初めてのキスはレナード様なんだってば…」
「いくら俺であろうとも悔しいものは悔しいんだ。眠っている俺を殺したいと思うほどに悔しい。もしこれが俺以外の者であったらと思うと……」
「…思うと?」
「何をしでかすか自分でもわからない。ひとまずその者の唇を切り落とすとこから始めるかな」
「…うん、よかった。私のキスごときで犠牲者が出なくて」
「アンナのキスをごときなどと…!あれほど素晴らしいものはない!!だからそんなに己を卑下しないでくれ」
「いや、今のは卑下でもなんでもないんですけど…」
レナード様のアホっぽさがどんどん加速してしまっている。
暗い寝室のベッドの上にいるとは思えない緊張感の無さに思わず口角が上がってしまう。
「っフフ、もう、レナード様ったら…おっかし……ハハッ」
「何がおかしいんだ?」
「だってレナード様がおもしろいんだもん。っフフ」
「おもしろいことなど言っていないが…。でもアンナが笑ってくれるのは嬉しい。笑うアンナは本当に可愛い」
仄かな光源に照らされながら私を見つめるレナード様の瞳がひどく甘い。
その甘い表情のまま私の額にキスをした。
今までも私のことを優しく見つめてくれていたけれど、なんだか特段優しい気がする。
急に甘えたくなって再びレナード様の肩に額を当てるように凭れると、レナード様が嬉しそうにその私の頭に頬擦りしながら抱き寄せてくれた。
「アンナ、寝ている俺にキス以外はされていないよな?」
「え゛」
「え…?」
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