上 下
89 / 122

 嫉妬で頭がイカレそうだ③

しおりを挟む




レナード様が意味がわからないことを言って思わずツッコミをいれてしまった。
なんだか力が抜けてしまい、起き上がって2人してベッドの上に座った。頭を抱えて愕然としている様子のレナ―ド様の手を握ってあげると、縋るように私の手を握り返してくれた。

「レナード様、あの、何を意味わからないことを言ってるんですか?」
「だってアンナの初めてを奪った男がいるだなんて……許せない」
「いやだからそれあなたなんで。あと初めてってなんか意味合い違く聞こえます。そこまで奪われてないです」
「当然だ!他の男に奪われてたまるか!」
「だから他の男じゃなくてあなたなんだってば!!」

どうしよう。レナード様がなんかアホっぽくなってきてしまった。
だけどそれがなんか可愛いと思っている私はかなり重症かもしれない。
それにこんなアホっぽくなった原因が自分だということが密かに嬉しい。

「えっと、心配せずともレナード様以外とキスどころか一緒に寝ることさえしたことないですからね。だから安心してください」
「安心など、できるはずがないっ…!憶えていないんだぞ!きっとアンナが拙く舌を絡めて慣れぬ息苦しさに戸惑う様子さえ俺は憶えていないんだ!」
「そ、そんなことなかったもん!……たぶん」
「憶えていないのなら他の男に奪われたのと同義だ……。くそ、寝ていた自分が憎くてたまらない…。俺は金輪際眠らない!」
「アホかぁ!」

レナード様の言い分もわからないでもない……いや、やっぱわからない。
だって結局キスしたのは自分じゃないか。それを喜んでくれよ。

「アンナ……眠っている俺と先程の俺とのキス、どちらがよかったんだ…?教えてくれ」
「だからどっちもレナード様でしょうよ!比べる意味がわからないよ!」
「俺だが俺じゃないんだ。言ってくれ、アンナ。どっちがよかったんだ…?」

仔犬みたいに縋るような目で私を見つめながらゆっくりと腰を抱いてくる。
さっきからレナード様が壊れてしまっているように思うけど、やっぱり可愛いと思ってしまう。そんな思いを伝えるように私を抱きしめるレナード様の逞しい体に腕を回し、広い肩に額を当てた。
フワリと香るレナード様の匂いをもっと嗅ぎたくてスリスリと顔を揺らしてみると、優しく頭を撫でられた。

「そんなの、さっきのキスに決まってるじゃないですか…」
「本当に?」
「だって、両想いだってわかってのキスだもん…。レナード様が眠っていたとき、夢の中で誰とキスをしているつもりなんだろうって悶々と考えてたんですよ…?ソフィー様と夢が繋がってるってわかったときレナード様がソフィー様と…なんて思ったこともあるし…」
「俺が他の女性となんて夢だろうとありえない!!夢の中でもアンナとキスをしていたに決まっているじゃないか!」
「え、そうなの…?」
「あぁ。一緒に眠るようになったときは既にアンナがリィタだとわかっていたから、毎夜アンナと…」
「私と…?」

妙なところで言葉が切れ、続きを促すとレナード様がとても歯切れ悪く言葉を続けた。

「アンナと…愛し合うという…都合のいい、本当に夢のような夢を、毎夜見ていたんだ」

快眠機能付き愛玩人形なんかじゃなかったんだ…!

噛み締めるように喜びを感じていると、そんな私のことをレナード様が目を細めながら見つめていた。

「今のでわかったと思うが俺はアンナへの独占欲を止められない。生涯アンナだけを見つめ、アンナに俺の全力をぶつけることになるんだぞ?しつこく聞いて悪いが本当にそれでいいのか?」
「いいですよ。いっぱい独占してください!レナード様の全力をまるっと余裕で受け止めてあげます!」

褐色の頬を僅かに赤らめ嬉しそうにしている表情を見て、思わず私も頬が緩んだ。

「では遠慮なくアンナにぶつけよう。アンナの初めてのキスを奪えなかった悔しさも含めて余すことなく俺のすべてをぶつけるよ」
「いやだから初めてのキスはレナード様なんだってば…」
「いくら俺であろうとも悔しいものは悔しいんだ。眠っている俺を殺したいと思うほどに悔しい。もしこれが俺以外の者であったらと思うと……」
「…思うと?」
「何をしでかすか自分でもわからない。ひとまずその者の唇を切り落とすとこから始めるかな」
「…うん、よかった。私のキスごときで犠牲者が出なくて」
「アンナのキスをごときなどと…!あれほど素晴らしいものはない!!だからそんなに己を卑下しないでくれ」
「いや、今のは卑下でもなんでもないんですけど…」

レナード様のアホっぽさがどんどん加速してしまっている。
暗い寝室のベッドの上にいるとは思えない緊張感の無さに思わず口角が上がってしまう。

「っフフ、もう、レナード様ったら…おっかし……ハハッ」
「何がおかしいんだ?」
「だってレナード様がおもしろいんだもん。っフフ」
「おもしろいことなど言っていないが…。でもアンナが笑ってくれるのは嬉しい。笑うアンナは本当に可愛い」

仄かな光源に照らされながら私を見つめるレナード様の瞳がひどく甘い。
その甘い表情のまま私の額にキスをした。

今までも私のことを優しく見つめてくれていたけれど、なんだか特段優しい気がする。
急に甘えたくなって再びレナード様の肩に額を当てるように凭れると、レナード様が嬉しそうにその私の頭に頬擦りしながら抱き寄せてくれた。


「アンナ、寝ている俺にキス以外はされていないよな?」
「え゛」


「え…?」



しおりを挟む
感想 79

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛

冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!

処理中です...