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30 嫉妬で頭がイカレそうだ
しおりを挟む抱きしめられている、というよりも腕に囲まれ、囚われている。
「ンンッ……っ、ふ、ンぁ」
頭を後ろから優しくも押さえつけられながら行うキスはひどく苦しい。
苦しいと思っているはずなのにレナード様の首に回した腕の力は緩まるどころかどんどん強まっていく。
私だけじゃない。
もうすでに十分すぎるほど密着しているというのに、その間にある空気さえも邪魔だというようにレナード様の腕の力が強まっていく。
「っ、ン、……っ、は、んん」
時に目を瞑ってクチクチと水音を出し合いながら舌を縺れ合い、時に目を開け互いの瞳の色に陶酔しながら唇の柔さを愉しむ。
いつも2人並んで座っていたソファの上で、深く腰掛けるレナード様の体に跨っている。
ドログチャベト発言をしたレナード様はダイニングチェアに座った私を抱きしめてくれていたのだが「もっとアンナに触れていないと狂いそうだ…」と小さく溢し、私を容易く抱き上げ今の体勢へと落ち着いた。
「ふぁっ……ッン、……っ」
当たり前だがレナード様のキスは眠っているときよりも数段激しい。
わざとなのかと思うほど唾液の水音をクチュクチュと出し、上あごを舐め、舌裏を舐め、引っこ抜かれるかと思うほど舌を吸われ、また舌を絡め合う。
それに加えて私の体をガッチリ固定している腕が背中を撫で、腰を撫で、尻を撫でてくる。しかも頭を押さえる手さえも頭を撫でてきたり、耳を指で挟んできたりする。
私を捕らえて離さないその思いと腕の逞しさが嬉しくて、必死に舌を彼に差し出し続けた。
「はぁ、っ……レナッ……さ、まぁ……」
「アンナが言ってくれたようにオムライス味のキスができたな」
「オムライスの味なんてわかんなかった……」
「ならもっと味わってくれ。俺ももっと食べたいから」
「~~~っ」
レナード様に体をすべて預ける体勢が恥ずかしいけれどひどく心地いい。男の人に……いや、好きな人に体を預けるという快感にも似た陶酔感が自分の中で溢れ返っているのがわかる。
しかも最近鍛えてほぼ完成形となっているレナード様の屈強な体は安定感が凄まじく、それもまた体を預けたいと思ってしまう1つの要因だろう。
「なぁ、アンナ。あなたはどうにもキスに慣れているように感じるのだが……俺の気のせいだよな?」
「っえ゛」
「……え?」
思わず反応してしまった!
一瞬にして至近距離で覗いてくるライムグリーンの瞳に影が差す。
いや、影というよりも闇という表現が正しい。
「アンナは、キスに、慣れて、いると……、そういうことか?」
「っぇと…」
細かく言葉を区切ることに背筋を逆なでされるような恐怖が襲った。
だがしかし逃げられない。逞しすぎる腕の包囲網によって物理的にはもちろん、視覚的にも逃げられると思えない。
いやいや待て待て。
そもそも慣れるほどキスしてた相手は他でもなくレナード様だ。レナード様以外にキスなどしたことがない。
だけどそれを言ってしまえばレナード様は寝ながら私を襲っていたということを芋づる式に教えなければならない。
それはきっと本人にとっても少なくない衝撃だろう。
なにより私がそれをずっと容認していたという事実がなかなかに恥ずかしい。
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