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地獄を選んで③
しおりを挟む言葉を失ったレナード様を見て、自分が熱くなりすぎていることに気が付き、落ち着くために大きく息を吐いた。
「とりあえずとても重要なことを言われたので確認させてください」
「あ、あぁ…」
「レナード様は私のことが好きなんですか?」
「っ」
喉を詰まらせるような音が聞こえ、レナード様は否定も肯定もせず目を逸らした。
先程私が好きだと、私がリィタだと言ったことが私の幻聴ではなかったときちんと確認をしたい。それを先程はサラリと言ってのけたくせに今は言葉を詰まらせるレナード様に対して私が抱いたのは、苛立ちでもなんでもなくただの愛しさだった。
「レナード様。ちゃんと教えてください。私のこと、性的に好きなんですか?」
「せ、性的という言葉を言わないでくれ!」
「じゃあ私のこと性的には見れない?私はレナード様にとって女として魅力はないですか…?」
「っ、…………そ、そんなこと、あるはずないっ……。あなたは、俺にとって世界で唯一の、魅力的な女性だ……」
「私のこと、性的な目で見てくれます?」
「っ…あ゛ぁ゛、くそ!そうだ!俺はあなたのことをとても性的な目で見ている!!」
「レナード様が私のことを性的な目で……」
「あ、あなたが言わせたんだろ!」
「嫌だなんて言ってませんよ。むしろ大いに性的な目で見てください。レナード様にだけ特別に私のことを性的な目で見ることを許します」
「くそっ……まんまと喜んでる自分が憎いっ……!」
レナード様は本当に悔しそうに頭を抱えて歯噛みした。
思いを伝えあって、わかりあったというのにレナード様はさっきから顔を歪ませたり困惑してばかりで、喜んだ様子がない。
それを少し寂しく思い始めてきた。
「レナード様は、嬉しくないの…?私達、両思いなんですよ?」
「う、嬉しくない…はずがない……だが」
「だが?」
レナード様が今、何を考えているのかがさっぱりわからない。
私をどうにかこうにか拒絶しようと考えているのだろうか。
私なりに必死に説得して、必死に脅していというのに。……もうこれ以上は手がない。
「一体何に悩んでいるんですか?私、レナード様のためならなんでも受け止めて受け入れてあげますよ。どんな特殊性癖をお持ちだろうとがんばる所存です!痛いとか苦しいのはちょっと、その、お時間をいただきますけども」
「痛いとか苦しいのを受け入れようとしないでくれ!そもそも俺は別に特殊性癖などないっ!強いて言うなら……」
「強いて言うなら?」
問い返すとレナード様は我に返ってしまったらしく、ゴホンと咳払いをして言葉を続けなかった。
レナード様の性癖……知りたかった。
赤ちゃんプレイが嫌ということはわかっているけれど、むしろ好きなプレイを知りたい。私はまっさらな処女なのだから今なら何色にも染まれる自信がある。
「あなたはいいのか?恐ろしいほどの執着心を俺に向けられるんだぞ?それは死にたくなるほどの苦しみへと変わるかもしれないんだぞ?それでも、俺からは逃げられない。それでもいいと本当に思うのか?」
その言葉を聞いて、ストンと自分の中で理解した。
これまでさっぱりわからなかったレナード様の気持ちを今、いとも容易く理解した。
――――……あぁ。なるほど。
この人は、さっき言っていたように私に嫌われることが本当に怖いのだ。
私を愛して愛して愛して愛していて、だからこそ怖いのだ。
こんな屈強な体をして、
高位職の騎士の中でもさらにエリートなくせに、
たかが街の枕屋の私に嫌われることを恐れている。
なんて、
なんて愛おしい人なのだろう……――――
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