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「…………は?」
「レナード様が出ていくというのなら、私はもう金輪際何一つ口にしません!このバターライスのオムライスを最後の晩餐としてここで餓死します!」
「は!?」
「あー!最後に食べたのが大好物でよかったー!好きな人が作ったご飯が最後だなんて幸せだなー!」
「なっ、な…」
「それが少しでも嫌ならここにいてください!もちろんこれからレナード様に好きになってもらうよう努力します!今まで通り私を安眠機能付き抱き枕として扱ってくれたっていいです!でも、私の努力も見てください!」
「待っ、待ってく…」

頭が沸々と茹っていく。
それに伴って目頭がひどく熱い。熱すぎて痛いほどだ。



「だって…レナード様と、一緒にいたいんだもん…」



こめかみが痛い。
無意識に泣かないよう目の周りに力を入れていたようで、その痛みを自覚したと共に視界が滲んだ。


「ど…どうしたら、私と一緒にいたいっておもってくれますか…?」


自分の声が震えていた。
それを聞いて、目頭が熱くなっていく。


「どうしたら、私を女として見てくれますか…?」



もっと冷静に、しれっと、理路整然と、ヤンデレに、脅せると思ったのに。



膝の上に置いていた自分の拳にパタパタと雫が落ちた。
手の甲に落ちた玉雫がするりと落ちたのが滲む視界の中で見えた。

怖くてレナード様の顔が見られない。



「どう、したら……私のこと、…好きになってくれますか……?」



この脅しが意味を持っていないことになど初めからわかっている。
こんなことを言っても人の感情が動くわけがない。
レナード様が私を好きになるわけじゃない。

それにこんなもの、もはや討論でもないし況してや甘い告白でもなんでもない。
レナード様に縋り付いて、しがみついて、泣きついているだけだ。



それでも、レナード様がそれで折れてくれるなら、絆されてくれるなら、……好きになってくれるなら、私はどんなにみっともないことでもしよう。


だからもっと足掻く。
もっと縋りつく。
もっと醜く、這いつくばってでも、
生き恥曝してでも、


――――それほどまでに、彼が欲しい。



「わ、私!全然取り柄なんてないけど、胸の大きさと顔だけは割と褒められますよ!どうです!?巨乳の可愛い子にここまで好かれたらちょっとは絆される気にもなりませんか!?」
「…あなたは」
「めんどくさがりだけど、レナード様のためならがんばります!朝だってちゃんと早くに起きるし、髪だって自分で梳かすし、身だしなみだって外に出ない日もちゃんとします!料理苦手だけど、レナード様みたいに美味しくてオシャレなものなんて天地ひっくり返っても作れないけど、でもがんばります!あ、あとは、えっと…」
「…もう」



足掻け。
もがけ。

もっと醜く、不細工に



「わ…私…全然いいところなんてないけど…、でも、レナード様のためならがんばります。だから私のダメなとことか、…き、嫌いなところ、言ってくださいっ…。がんばるから…、血反吐吐くぐらいがんばるから………レナード様が私を好きになってくれるならどんなこともがんばるから……好きになってもらえるよう、ほんとにがんばるから……だからお願いしますっ……ここにいてください……私といることがつらくても、傍にいてください……」

「もう、……やめてくれ」
「――――っ」


絞り出すような声だった。
そして本心がにじみ出た声だった。

その声が私の胸の芯の部分を潰すように痛めつける。



だけどやめるつもりなどない。



悲しみと怒りと決意が入り混じるような思いを今一度抱きながら、ずっと俯いていた顔をパッとあげてレナード様を見た途端……―――――今の今まで抱いていた感情が霧散するほど呆気に取られた。






レナード様の褐色の肌の顔が耳まで真っ赤に染まって身悶えていたのだ。







「顔あっっっっっっか」





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